
(2009/10/10)
無用なトラブルを起こさないためにも今回は、前号の続編として、「遺言書を作成していなかった場合のトラブル事例 <後編>」をご紹介。たとえ子どもがいなくても、遺言書を作成しておかないと無用なトラブルが引き起こされることは前号の通りだが、後編の今回は、“複数の子どもがいる場合に起こりうる相続問題”を取り上げ、その「解決策」を指南する。
CASE 2 「こんな人には遺言書が必要!」
家業が継げない!?
―複数の子どもがいる夫婦編―
B氏は両親がずっとやってきた家業である農園を継ぎ、妻と子どもと共に両親と同居していた。B氏には弟がいたが、その弟は大学入学と同時に他県で一人暮らしを始め、卒業してからは銀行に就職し、結婚してずっと他県で暮らしていた。
そんな平穏な日々の最中、B氏の父親が突然脳溢血で倒れ、そのまま帰らぬ人になってしまったのである。
B氏の父親は遺言書を書き残していなかったため、B氏が遺言執行者となり、農地を自分に、自宅を母親に、そして預金を弟に分配することを決め、遺産分割協議書に印を押してくれるよう弟に郵送した。
しかし、そこで弟からこんな返事が来たのである。
「相続分は母親が1/2、兄さんと自分で残り1/2を分配すると法律で決まっているはずだ。でも、兄さんが相続すると言った農地は評価額を見ると2000万なのに、僕が相続できる預金は150万しかない。そんなの不公平じゃないか」
さて、B氏はどうなるのか……そして、亡くなった父親は生前どうすればよかったのか?
解決編
あなたに子どもがいる場合は、法定相続分は配偶者に1/2、子ども全体で1/2になる。子どもが複数の場合は、その1/2をさらに人数で等分することになる。
しかし、子どもの中には家出したものがいたり、また逆にずっと実家にいて、老後の面倒をかいがいしく見てくれた子どももいるだろう。この場合、面倒を見てくれた子どもに多く財産を残したいと思うのは当然の話 だ。
法律上では、被相続人によく貢献した相続人は、「寄与分」として、遺産を多くもらえる権利がある。しかし、遺産分割協議の際にそれが決まらないと、家庭裁判所に審理をしてもらう必要があり、かなりの時間と費用がかかってしまう。
また、預貯金はともかく、家や土地などを等分しろと言われても、実際に分割することはかなり難しい。特に農家だったり、アパートの賃貸や会社を経営している場合などは、その家業に適した人材に相続させたいという意思もあるだろう。
先ほどのB氏の場合、確かに土地の評価額で見ればB氏のほうが預金を相続する弟より相続分が多いかもしれない。しかし、現に農業を継いだのはB氏であり、この土地がなければ農業を続けていくことはできないだろう。
一方弟と言えば、一切家業には携わらず親とも同居もしていなかった。もしその弟の言うとおりに分割するとなると、土地を売ってその金額を分ける必要があり、B氏やB氏の妻子、さらには残された母親さえも生活が立ちいかなく恐れがあるのである。
結局B氏は弟との話し合いがまとまらず、家庭裁判所に審理をしてもらうこととなった。そして、その結果、B氏が土地を、弟には預金をという当初B氏が提案していた案でまとまったのである。
その後、弟とは疎遠になってしまい、今ではほとんど会うことはないという。
これまで仲の良かった兄弟が相続問題をきっかけに争い、仲たがいしてしまうことはなんとも悲しいことである。後に子ども同士の争いにならないためにも、元気なうちに公正証書遺言書を作り、誰にどの遺産を相続させるかを明記しておくことが望ましいのだ。 その際にはなるべく、「なぜそのわけ方にしたのか」などの理由もつけると、当人達の納得が得られて相続がスムーズにいくはずだ。

☆ここがポイント
・ 子どもが数人いる場合は、遺産を公平にわけるとしても、そのわけ方で争いが
起こる可能性もある。
・ 特に自宅や土地などは、等分にわけることは大変難しい。そこで、兄弟間で
不公平感がおこらないように遺産のわけ方を指定しておけば、相続手続きが
スムーズに進む。
●次回は「愛人や内縁の妻がいる場合」の具体的事例&遺言書的解決法を指南しよう。
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