(2009/11/10)
無用なトラブルを起こさないためにも具体例を出して解決まで導く特集も、今回で3回目。今回は精力的に仕事に取り組まれているデキる男ならあってもおかしくない話、「愛人がいる場合」についての相続問題を取り上げることにする。
ぜひ、こちらを読んで「修羅場回避」のために参考にしていただきたい。
CASE 3 「こんな人には遺言書が必要!」
死んでも死に切れない!?
‐愛人、そしてその間に子供がいる場合‐
A氏は上司の娘である女性と結婚して15年。その妻との間には13歳の男の子と10歳になる女の子がいる。結婚して7年が経つころには夫婦の仲は冷め、A氏には他に心を通わせる女性が現れたのである。
そして、その女性との間になんと子供ができてしまう。
心を通わせている女性との間にできた子どもだからこそ認知したいが、妻との間にできた子どものことや、義理の父である上司との関係を考えると、なかなかふみ切れずにいた。
そんな悩める日々の最中、A氏は仕事中に交通事故で、そのまま帰らぬ人となってしまう。
葬式も終わったある日、悲しみにくれる家族のもとへ故人の生前の愛人が子どもを連れてやってきて、こう言った。
「この子はAさんの子どもです。そちらのお子さんと同じようにこの子にも相続権があるはずよ」
夫が浮気をしていたのに勘付いてはいたものの、まさか子供までいたとは……。冷めきった夫婦だったとはいえ、その生活に耐えて今までやってきた妻は、「そもそも本当に亡くなった夫の子供かどうかわからないし、絶対に財産は渡したくない」と主張する。
さて、この問題、愛人とその子どもはA氏の財産を相続することができるのだろうか?
そして、A氏は生前にどういう対策をとっておくべきだったのだろうか?
解決編
あなたに子どもがいる場合は、法定相続分は配偶者に1/2、子ども全体で1/2になり、子どもが複数の場合は、その1/2をさらに人数で等分することになるというのは、前回もお伝えしたことだろう。
ここに愛人(内縁の妻)がいた場合、残念ながら相続権は愛人には与えられない。遺言書で「愛人にも財産を与える」という記載をしてもらわない限り、たとえ相手が奥さんと別居して、自分のほうがよっぽど妻らしいことをしていたとしても、法律的には財産を相続することはできないのである。
また、愛人とほとんど生活を共にしていたから「全財産を内縁の妻に相続させる」という遺言書を書いたとしても、法律上の配偶者には*1「遺留分」があるので、それを侵害するような遺言書を書いてしまうと、後々、醜い争いが起こるとも限らない。正妻は裁判所に、「遺留分減殺請求」をすることができるため、たとえ愛人と長年暮らした家があったとしても、その請求によって愛人はそこを追い出されてしまう可能性もある。
では、血を分けた子供ならどうだろうか?
法律上の妻以外との間にできた子どもとは、認知しない限り親子関係は生じない。生前は離婚していなかったり、社会的な立場もあって認知できなかったが、自分が死んだ後には認知したいというのであれば、遺言書ですることができる。
遺言書に子供を認知する旨が書かれていた場合、その認知は遺言書の死亡と同時に効力を発揮する。遺言書執行者は、就任の日から10日以内に認知届を提出しなければならない。このことも考えると、遺言執行者は血縁関係のある相続人ではない、第三者に依頼したほうが、後々のトラブルになりにくい。
そして、*2非嫡出子の法定相続分は、*3嫡出子の2分の1である。これを平等にしたいのであれば、やはり遺言書で指定しておく必要がある。ただし、愛人の場合と同じで、遺留分を激しく侵害するような内容にしてしまうと、争いになる可能性が高いので、残された者たちの気持ちを配慮した内容にするように心がけたほうがよいだろう。
*1 遺産の一定割合の取得を相続人に保証する民法上の制度。その割合は、相続人が直系尊属のみの場合は遺産の3分の1、それ以外の場合は遺産の2分の1と決められている。
*2*3 法律上の妻との間にできた子どもを嫡出子、それ以外にできた子どもを非嫡出子とよぶ。
☆ここがポイント
・ まずは、遺言書で子どもを認知すること。
・ 遺産相続を平等にしたいのであれば、遺言書で指定しておくこと。
●次回は「借金を抱えている場合」の具体的事例&遺言書的解決法を指南しよう。
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