(2009/07/24)
自信を持つことの大切さ
~父子分離、母子分離の必要性~
これを読んでいる方々はきっと仕事において成功され、中には会社を経営し、将来その会社を子息、子女に継がせようと考えている方もいらっしゃると思います。
第一線で戦い続ける経営者の親元で育った子どもたちの多くは、小さい頃から、日常的に会社経営の苦労話や、部下を指導する上での悩みを見聞きしています。さらに、休みの日も仕事の付き合いなどで家にいないことが多い父親を見て、「お父さんはいつも休みなく働いている。僕(私)には、とても真似できないなぁ」と自然に感じてしまっているはずです。
もちろん、経営者の子どもたちが、すべてこのような考えを持つとは言いません。
しかし、経営者である父親が作り出す環境と、それによって生まれる父子関係こそ、子どもたちが事業承継に自信をなくしていく大きな要因のひとつになるのは事実です。
経営者を親に持つ子どもたち(以下、二世経営者と呼ばせていただきます)は裕福な家庭で育ち、受験ともなれば有名な学習塾や家庭教師の元で勉強にいそしみ、進学校、一流大学へと順当に進んでいくでしょう。彼らは両親が敷いてくれたレールの上を、期待を裏切ることなく、まっすぐ走り続けてきたわけですから、根はとても素直なはずです。
しかし、レールの上を走るということは、石ころだらけの道を走るのと比べて、困難を自力で克服していく経験を十分に積まないまま育ってしまっている、とも言えます。石ころを自分で取り払うこともなく、ずっとレールの上を走ってきた彼らが、いざ社会に足を踏み出したときに、大きな壁にぶつかってしまうのは容易に想像がつきます。
すでに社会の荒波を経験している経営者の父親は、そんなわが子を理解できず、ことあるごとに叱咤するかもしれません。しかし、否定的な言葉ばかり浴びせてしまうと、二世経営者である彼らはますます萎縮し、自信を失ってしまいます。
このままでは、自信を持って会社を運営していくことができないばかりか、事業継承するという意欲すらも失いかねません。そうならないためにも早くから子どもたちに自信を持たせ、さらに「父子分離、母子分離をする」必要があるのです。
積極的に買い物や遠出をさせる
~人間力育成の第一歩~
では、父子分離、母子分離をするために必要な自立心や自信を、どのように育てていけばいいのでしょうか。
それは、「何でも自分でやらせる習慣をつけること」です。
たとえば、スーパーに買い物に出かけるとします。子ども自身に欲しいものを選ばせ、支払いを任せてみましょう。カゴをレジに持っていき、「これをお願いします」と頼み、財布からお金を出して自分で支払わせる。それだけのことかと思われるかもしれませんが、この体験で子どもは自分でやり遂げることの楽しさを知り、自立への第一歩を踏み出し始めます。
子どもがもう少し大きければ、使っていい金額の上限を伝えて、ひとりで買い物に行かせてもいいでしょう。ひとりで考え行動させることで、経済感覚が芽生え、自立心を養うことにつながります。
また、夏休みなど長い休みの日には、積極的にひとりで行動させましょう。たとえば、ひとりでキャンプに参加させてみる、離れた場所に住む祖父母の家にひとりで行かせるなど、自分だけで行動させることがポイントです。
そういった成功体験をどんどん積み重ねていくことで、子どもは自ら考え(分析力)、決断し(決断力)、行動に移すことができるようになる(行動力)、すなわち「人間力」が身に付いていくのです。
家族でするゲームのススメ
~楽しみながら競争心をつけさせる~
厳しいビジネス社会を生き抜いていくためには、自立心だけでなく「競争心」も必要となります。
しかし、最近の子どもたちは兄弟姉妹が少なく、学校では順位をつけることをよしとしない風潮があるため、他人と競い合うことに慣れていないケースが多々あります。
3から4人兄弟が当たり前だったひと昔前なら、家庭内でも自然に自己主張をしていたでしょう。学校でも、勉強が得意な子、かけっこで一位を目指す子など、個々の得意分野を磨いて仲間と競い合ったものです。競争することで刺激し合い、向上するために努力することのすばらしさや、大切さを知るきっかけになったのだと思います。
子どもの競争心を育むためにお勧めなのが、家族みんなで遊ぶゲームです。
ゲームを行う際のポイントは、競争心をくすぐるような仕掛けを考えること、具体的には、順位をつけることや勝った人には特別なご褒美を与えるというルールを設けることがポイントです。
さらに、ゲームもテレビゲームではなく、積み木など手作りのゲームが理想的です。
余談ですが、最近の傾向として、空間図形が理解できない生徒が増えているようです。物を平面でしか捉えることができず、立体を認識することができないのです。これは、二次元世界のテレビゲームばかりに熱中して、三次元の物体に触れる機会が少ないことが原因です。子どもは、円錐や四角柱などの積み木を実際に手にして、初めて体と脳で理解するのだと思います。
最後に
~目を見て会話することの重要性~
二世経営者として子どもを育てるためには、早期に父子分離、母子分離をして、さらに競争心を持たせることが必要であることは、おわかりいただけたと思います。ここで、最後にひとつ注意していただきたいことがあります。
早く自立心を芽生えさせたいからといって、すべてにおいて「自分でやりなさい」と突き放してはいけないということです。手を差し伸べるタイミングや、どこまでひとりでやらせるかの見極めは、子どもと向き合う日常の中から読み取れるものだと思います。
ここまで読まれて、「うちは子どもと頻繁にコミュニケーションをとっているから大丈夫」と思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?
では、ここで質問です。
いつもお子さんの目を見て話をされていますか?
お子さんの前で夫婦同士が話すとき、お互いの目と目を合わせていますか?
「目は口ほどにものを言う」とはよく言ったもので、口では「大丈夫」と言っている子どもでも、目は不安そうにしていたり、伏目がちだったりすれば、それは本当の意味の「大丈夫」ではありません。
たとえたくさん会話を交わしていたとしても、目を合わせていなければ、それは上辺だけのコミュニケーションにすぎないのです。子どもが発信するSOSのサインに気付かなければ、いつまでたっても信頼関係を築くことはできません。親が思っている以上に、子どもは親の一挙一動を見て、マネをしているもの。何よりも、まずは夫婦が互いに見つめ合って話をすることが、子どもに接する上で大切な基本姿勢です。
そのうえで子どもの目線に立ち、子どもの真意を汲み取る会話をすることを心がけてください。そうすれば、ここは自分で考えてさせるところ、ここは一緒にやってあげなくてはいけないところという見極めができ、真の自立力を育てることにつながるはずですから。
●次回は、「自立力」を踏まえて、人前に立つことが多い経営者に必要な「プレゼンテーション力」についてお話します。
|
筆者紹介
|
back number
|

安田 龍男 Tatsuo Yasuda


