(2009/11/24)
真似から始めて観察力アップ
人間はゆっくりと変わっていくことに対しては、なかなか気づかない傾向があります。例えば、ある人が髪をバッサリ切れば周りは気づくでしょうが、少しずつ切っていくと、よっぽどその人を意識して見ていない限り、切ったことになかなか気づかないものです。
観察力があれば、世の中で起きる少しの変化にも敏感に対応することができます。めまぐるしく変わる世界情勢、ビジネス情報に対して、常にアンテナを張り、その変化に遅れることも、惑わされることもなくなるでしょう。もちろん、小さな作業の中でも広い範囲に目が行き届き、その結果、ミスをすることが少なくなります。
人間関係においても、観察力があれば、相手の発する言葉から、言葉以上のことを読み取ることができるようになります。相手のしぐさ、表情、何気なく出た言葉から、相手が何を考え、何を大切にしているか、どういうものが好きなのかをくみ取ることができるのです。そうなれば、相手に合わせた応対が可能となり、人間関係を良好にすることができるでしょう。
逆に観察力が欠けていると、自分のフィルターを通して物事を見てしまうため、観察している対象を見ているようで、実は見ていないということが起こります。その結果、自分に都合のいい解釈をしてしまい、事実をゆがめて受けとってしまう恐れもあります。
松下幸之助氏の言葉に、「他所さんの品もんのええ所を徹底的に研究して、何か1つか2つ足せばええんや」があります。自らの会社を「マネシタ電器」とまで言い放ったその背景には、するどい観察力があります。観察力に優れていれば、物事の良し悪しを見極め、自分の足りない部分を知り、良い部分を取り込み、今以上の発展ができるのです。
現代の厳しいビジネス環境の中では、守りの姿勢だけでは生き残っていけません。常に視野を広げ、新しいものを取り入れることで成長していくことが求められます。観察力はビジネスマンの必須能力の1つだといえます。
感性が観察力を鍛える
皆さんご存じかと思われますが、脳トレという、観察力を鍛えるゲームがあります。お子さんにゲームをさせたくはないけど、こういうゲームなら積極的にやらせてもいいと考えている親御さんもいらっしゃることでしょう。もちろん、ゲームをさせることを全否定するつもりはありませんが、人工的なものを使わずに、自然の中で観察力を育ませる方法をお勧めします。
お子さんの中では勉強をたくさんし、こちらが質問しても隙のない答えをする子がいます。しかし、知識だけをつめ込み、人工的なものばかりに触れていて、自然のものに触れることがなく育ったお子さんは、優等生的な答えができても、どこか機械的な返事しかできず、自分の本当の考えや思いをうまく伝えることができない傾向が見られます。そのようなお子さんに、自分の考えや思いを話させるような質問をすると、とたんに言葉につまってしまうのです。
知識はたくさんあっても、自然のものに触れて感性を磨かない限り、知識を有効的に使う“知恵”というものを持つことはなかなかできません。知恵を持てば、臨機応変に対応する力が身につきます。また、感性を磨くことで、いろんなことに興味を持ち、「その対象をじっくり見ようとする力=観察力」が身につくのです。五感をフルに使った観察力を身につけるためにも、知識つめ込み型の教育ばかりでなく、「心で見て、聞いて、話す」といった、心の豊かさに焦点をあてた教育が非常に大切だと思います。
家庭で観察力を育む法
ご家庭で観察力を育むためには、まずご両親自ら、感性が磨かれる場所に行く必要があります。子どもは成長する段階で、まず、ご両親の言動や行動にとても興味を示し、真似をします。ご両親の感情表現が豊かであれば、それを真似して、結果、感性が磨かれ、いろいろなものに興味を持つようになり、観察力が身につきます。
お子さんが赤ちゃんのときは、ベビーカーに乗せて、景色や自然がきれいなところへお散歩に行くことをお勧めします。花や生き物を見て、ご両親自らが感動し、「景色がきれいだね」「アリさんの行列がすごいね」など、お子さんに話しかけることが大切です。また、動きのある知育玩具を持たせて、手で触れ、目で追う経験をたくさんさせてあげましょう。
お子さんが一緒に会話をできる年頃になれば、「桜の花が満開ですばらしいね」とか「うろこ雲が秋を感じさせるね」というような話をし、興味の対象を広げる助けをしてあげてください。お子さんが幼稚園や学校に通うようになれば、図鑑を見せるようにするのもいいでしょう。その際、図鑑を見せてから自然に触れさせるのでは効果がありません。まず、ご両親と一緒に自然のあふれる場所に行き、そこで珍しいものを見つけては、それが何かを調べるために図鑑を利用するようにしましょう。そうすることで、子どもはじっくりと対象物を見る習慣が身につき、細かいところまで目が行き届くようになり、観察力が育まれます。
お子さんがさらに大きくなったら、絵を書いたり、パズルをすることもオススメです。写生やパズルは、形や色などをいろんな角度からじっくり見て観察しなければ完成させることができませんし、記憶力、思考力も必要となるため、真の観察力を育むためにはうってつけのものです。また、こうした取り組みは、できあがったときの達成感を味わうこともできるので、課題は必ず成し遂げることができる簡単なレベルから始めるといいでしょう。そして、達成できれば、順次レベルを上げていくようにしてください。
こうしたことを積み重ねると、観察力が身につくだけではなく、物事に敏感に反応する力も身に付きます。
最近のお子さんに多く見られがちである、「図形問題が苦手」ということについても、観察力を身に付けることで克服することができるでしょう。紙という平面に一方向から書かれた図形を見て、その全体像を想像することができるのは、観察力があってのことです。
大人になるといろいろな知恵がつき、観察力に対して鈍感になることが多いですが、子どもは敏感で、どんどん伸びていきます。そんな子どものうちに、ぜひ観察力をしっかり身につけさせるようにしていただければと思います。
●次回・最終回は経営者への更なるステップとして「聞く力」についてお話します。お楽しみに。
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安田 龍男 Tatsuo Yasuda


