bookコンシェルジュ

(2009/11/10)
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自分の生き方についてもう一度考えたくなる2冊


秋生まれだからか、子どものころから秋が一番好きな季節だった。あんなに暑かった夏もだんだん涼しくなって、日も短くなった。夕刻、出先から会社に帰る途中、東京でもイチョウの葉が色づき始めているのに気づいて、ふと足を止めた。こんな一瞬の時間もなかなか持てていなかった。忙しいと言っているわけじゃない。自分は何にも気づこうとしていなかったのだ。

今年の残りももう2ヶ月をきった。子どものころは、大人が「あっという間に時間が経つ」と言っていても、意味が何にもわからなかった。働き始めた20代は、先輩から「30代なんて一瞬だよ」とエラそうに言われても、「そんなこと言ってるから、あんたはオヤジなんだよ」と心の中で舌を出していた。その30代も過ぎた今、もしあのころの自分に声をかけることができるなら、いったい僕はなんと言うだろう。

さて、秋を楽しむ間もなく、書店では歳末商戦が始まった。店頭にもいつの間にか手帳やカレンダー、日記が並んでいる。出版社の営業マンは「あれぇ、この前までウチの『○△×(タイトル)』をここでやってくれてましたよね?」と、手帳が山と積まれている平台を指すことになる。書店の売り上げが増えるのは本当にうれしいが、本当は本で売り上げが伸びればそれが最高だ。クリスマスに備えて絵本などの児童書も売り上げが伸びる。ほかにも年間ベスト10なども発表されるから、これから各書店は限られた時間と店頭スペースの中で大いに知恵をしぼることになる。

自分スタイルを確立して
今とこれからを楽しむ


失礼ながら、もっと嫌な人だと思っていた。

『サバイバル時代の海外旅行術』 の著者、高城剛氏のことだ。一読後、その印象は180度変わる。この人は実践の人だ。机上の空論を真っ向から否定する人だ。自分の中での評価の変わりように自分が一番驚いている。

本書はタイトル通りまさに海外旅行をする人のためのノウハウを明かしている。まず、日本で作られている旅行ガイドを全面否定。高城氏が愛用しているのは世界で最も売れているという『ロンリープラネット』の「ポケットシリーズ判」だ。日本のガイドブックは、書き手の責任の所在があいまいだったり、旅行会社や航空会社とのタイアップも多い。しかし、それとは対照的にジャーナリステックなスタンスで書かれているため、誰がどこに行って何を書いたのかがはっきりわかるのだ。広告主に気をつかって、格安航空券などについて書けない日本のガイドとは中身の「使える度合い」が違うという。

高城氏が提言しているのは、「日本の既成のガイドブックに載っている余計な情報に惑わされず、自分スタイルの旅のカスタマイズをしよう」ということだ。単なる観光ではなく「世界のお祭りに参加」するとか、「食べること」だけを目的にしてもいい。まずは「自分だけの10のやりたいこと」を書き出し、そこに行かなければできないことを整理すれば、旅の目的がはっきりするという。

ちなみに私は本書で初めて「分子料理」というジャンルを知った。とにかく、21世紀型の旅のスタイルはこれまでとはまったく変わっていて、それに気づかないと損をするのだ。情報収集にしてもそうだ。これまではガイドブックだったが、いまはネット社会。どこにでもアクセスして情報を集められるが、著者がすすめるのはCIAのサイト。きめ細かい情報を速い更新スピードで提供しているという。無料でその国の治安、為替レート、気候、経済の安定度なども把握できる。

そしてネット時代でも変わらずに重要なのが地図。著者は「地図は買うよりもらえ、もらうよりつくれ」という。日本で買った日本語の地図より、現地で役立つのは現地で用意された地図。空港のインフォメーションやホテルでもらえる地図を馬鹿にしてはいけない。そして、それを参考に自分でバージョンアップした地図を作ればいいのだ。さらにグーグルの検索機能も情報収集に使える。著者が行く前に必ず調べるのは現地の日没時間。たとえばロンドンは夏至の日の入りは21時22分に対して、冬至は15時54分、こういった皮膚感覚の情報はもちろん行けばわかるが、事前にわかっていると行動プランが立てやすい。

ほかにも本書では、iphoneをはじめとした旅の7つ道具、圧縮製を基準に選ぶ衣類、パッキング術などが余すところなく紹介されている。それを読んでいるだけでもワクワクしてくるから不思議だ。余計なお金は極力使わず、そして決してみみっちくもない、世界基準の旅をしたい人にすすめたい。限られた時間とお金を有効に使おうと思ったら、もっと賢くならなければならないのだから。

「いつか時間ができたら旅に行こう」と思っている人は多いだろう。「お金がない」とあきらめる人も多いはずだ。「外国語をマスターしてないから……」と二の足を踏む人もいるだるう。でも、今の年齢でできる旅は今しかできない。

本書は旅のデザインを自分流にするというのが目的だが、どうやらそれは自分の生き方をデザインするということにも通じるのだ。これから年末の予定を考える人も多いだろう。ガイドブックを買う前に本書を手にしてほしい。

もう1冊も早く読んでおくにこしたことはない名著である。『35歳の教科書』(藤原和博)。 藤原氏は、[よのなか]科と「和田中の校長先生」で有名だ。

充実した40代からの人生を過ごすために、35歳前後での意識改革が必要で、その世代に向けて書かれているのだが、すでに35歳を過ぎた身で読んでも、何かが体中に突き刺さるのを感じるような刺激的な本だ。環境は変わっているのに、旧態依然とした働き方、考え方でいいのかという疑問を呈している。

具体的に紹介しよう。これまでは「みんな一緒」の時代だったが、今は「それぞれ一人一人」の時代に変わったために、過去においては目標だったモノ(たとえば家とか、クルマ、ブランド品、学歴なども)がまったく意味をなさなくなっている。つまり、今までのモノサシが使えないので、これからは自分本位で考えないといけない。そのために相手の意見や周囲の環境を客観的、分析的に理解し、「いいところ」は柔軟に受け入れる、「クリティカル・シンキング」といった思考回路が重要になってくる。

今の肩書きがない世界に行ったら、自分に何ができるのか?

「名刺禁止」「仕事の話禁止」で誰かに自分のプレゼンテーションをするとしたら、いったい何を語れるのだろうか?

会社以外に打ち込んでいるものがある人はいい。それがない人は?

本書を読むと、自分の会社だけの「常識」を疑うようになるはずだ。その「常識」をこれまで部下や後輩に押し付けていたはずなのに。ずばり、「組織の囚人」か、「人生の主人公」かの選択だ。もともと著者も「囚人」でしかも「立派な模範囚」だった。だが31歳で病気になってからは考え方が変わっていく。自分の人生を自分の手でデザインしていこうと考えるのだ。決して高圧的な「べき論」を展開しているわけではない。本音で語り合おうという本である。

深まる秋に気づく間もなく、ただただ仕事に追い回され、疲れていないか? 今、たまっている仕事を片づけても、すぐに次の仕事が目の前にくるだけで、何も変わらない。

今日だけでも、ただ本を読むためだけに定時に会社を出てみようか。

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