(2010/03/24)
プロフェッショナルたちに学ぶ春
何ヶ月かぶりにコートを着ずに出社した日の帰り道。すっかり遅い時間になっていたが、体が軽くなって気持ちがいい。湿った南風が足元で舞っている。月がおぼろに見えた。東京にも春が来たんだ。春は他の季節にくらべると優しく日々の暮らしに溶け込んでくる。毎年のことなのに、毎年、ああそうだ、こんな感じだったなってそのたびに新鮮に思う。そしてこれもいつものことだが、決まって子供の頃を思い出す。学年や学校が変わる直前の寂しさと高揚が入り混じった感覚だ。なぜか正月よりも、この季節の方が、年が変わる気がしていた。大人になると、いつのまにか季節感は希薄になった。ちょっともったいないことをしているな、そんなことを感じた春の宵だった。
さて、幻冬舎営業局も昨年来の「巻くだけダイエット」をはじめ、いくつもヒットが出て忙しい日々が続いている。特に「巻くだけダイエット」は10万部売れればヒットといわれる業界で、すでに160万部を超えているのだから自慢できる。これも読者はもちろん、支えてくれた書店さんや関係してくださった方々のおかげだ。もちろん、そのヒットの一方でジレンマも味わっている。なかなかすべての書店さんに満足いく冊数を届けられないという点だ。生産量は限界量まで増やしているが、それでも追いつかない。やむを得ず待ってもらうが、当然お叱りも受ける。ひたすら頭を下げて待っていただくしかない。書店さんはお客様からお叱りや催促を受けているのだから、もっと大変だ。言いにくいことを直接言っていただけることにありがたく思いながら、さまざまな声に耳を傾ける。
「良い残業」こそ、一流への近道
さて、今月はプロフェッショナルに関係する2作品。まずは「プロの残業術。」(長野慶太著)
対米進出のコンサルタントである著者の「画期的な残業ノウハウ」だ。いまや「ゆとり」だとか「ストレスフリー」という聞こえのいいキーワードがあふれているが、そんな傾向とは相反する1冊だ。32歳で日本の銀行を辞め、アメリカの法律事務所で働き始めた著者は、誰よりも多い残業をこなすことで周囲から認められたという。言葉や習慣やビジネススキルのハンディは残業で埋めた。もちろんただ会社に残っていればいいというものではない。「おバカさんの居残り」ではまったくの無意味だ。してもいいのは良い残業だけだ。
良い残業とは明日の自分をつくりあげる、戦略性の高い残業のこと。ビジネススキルを高め、本当のプロになりたいなら時間外に自分のための仕事をしなければならないと説く。これはプロ野球の選手がチーム練習を終えた後も、何時間も個人練習をしているのに似ている。「あれはプロの選手だから」と言ってはいけない。お金をもらって働くということでは何の違いもない。皆、プロのビジネスマンなのだから。
では、まず残業時間に何をすべきか。それは「やらされ仕事」をずるずるやるのではなく、「意義が明らかな仕事」をすべき。そしてこう言う。「残業がどうしようもなくつらく苦しいものだとしたら、その意味や意義が明らかになっているか意識し直してみるべきだ」。人にやらされている仕事は日中に済ませてしまえという考えだ。残業は自分のために楽しい仕事をするのだ。具体的には、例えば、上司から案件が下りてきた場合(ちなみに著者は何千人もの会社経営者に会ってきた経験から、優秀な経営者はほぼ例外なく短気だという。仕事にスピード感がない経営者に商売がうまくいかないというのだ。)。 さて、そんな上司の役に立つには、「会社にとって正しいことを上司よりも速いスピードで分析し、それを進言する」ことが大切だ。だから上司から突然指示が出てきたらよほど明白な誤りや問題がなければ、まず「はい」と素直に受けとめてから、私的残業で戦略を練ればいい。できる人ほど「はい」というのだ。
仕事上の細かいノウハウも紹介されている。例えば書き仕事。レポートや企画書がこれに当てはまる。まず、粗くても最後まで書いてしまうことがコツ。手が止まったら、自分用にメモを残して先に進む。調べ物も同様に後でまとめてしてしまう。さらに自分流の略語を使うなど工夫してメモを残せば、完成までのスピードが上がる。集中力が必要な仕事だから、邪魔の入らない私的残業時間にするのに適している。
とにかく一流になるにはラクしていてはダメだ。限られた時間を有効に使わなくてはならない。だからけっして「なんとなく帰りづらいから残業」するとか、「昼間の仕事が終わらないから残業」するとかではなく、もっとクリエイティブに時間を使うのだ。もう一度自分の時間の使い方を気にしたほうがいい。目からウロコとはこのことだ。
プロの残業術というタイトルだが、プロの時間術であり仕事術だ。このタイトルのひねりにも敬意を表したい。
→次のページでは『プロフェッショナルの言葉』をご紹介します。
- 1
- 2



