デキるリーダーの落とし穴

(2009/09/24)
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「心優しいタイプ」が陥りがちな

“カンチガイ”リーダーシップとは?


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C氏は、温厚で親切で他人思いの課長である。課長になる前から、社員たちが、「上下関係を盾に横暴な振る舞いをしている上司は最低だ」と管を巻くのを聞いていたこともあり、そんな非情な上司だけにはなるまいと心に決めていた。


たとえば、昨今出版されている「管理術」に関する書籍などを読んでも、ほぼ例外なく「昔の根性スポーツ漫画のようなスパルタ式指導は、今やパワーハラスメントになる」「部下の言い分に耳を傾けてこそ良きリーダーである」と書いてあるぐらいだ。


そのうえ、C氏は誰よりも部下のモチベーションこそが“業績向上”に繋がると信じていた。そこで、C氏は部下一人ひとりとの対話を重視し、彼らの話をじっくり聞きながら「そうだね、そうしよう」と返答した。


ところが……


ある日、C氏の会社は社員意識調査を実施した。C氏は、部署毎の結果を見せられて愕然とした。C氏の課に属する社員のモチベーションは全社平均と比べて低く、そのうえ彼らによる「上長のリーダーシップ」に関する項目のスコアが極めて低かったのである。


「わたしはいつも、あんなに部下たちのことを気遣いながら管理してやっていたのに、彼らにはその思いが届いていないのか……」と、C氏は頭を抱え込んだ。


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部下の「責任」を背負いながら、
「決断」のできるリーダーになろう


マクレランドという学者によると、人間には3種類の欲求があるという。

1つ目は「達成欲求」。様々なことを成し遂げたいという欲求だ。
2つ目は「親和欲求」。他者とうまくやりたい、好かれたいという欲求だ。
そして3つ目は「権力欲求」(「パワー動機」とも言われる)。他者をコントロール下におき、自分が有力な存在でありたいという欲求である。


C氏は、この3つの中で親和欲求が強いことがわかる。そして、「上下関係を盾に横暴な振る舞いをしている上司」は権力欲求が強いタイプの典型だろう。

マクレランドはこの3つの欲求と管理者としての適性についても分析している。それによると、管理者として向いているのは権力欲求が強い人であり、また、達成欲求が強い人は不向きである。親和欲求が強い管理者は、「部下の責任感」「役割の自覚」「チーム精神」いずれについても、管理者としての適性結果が最低だったとしている。C氏の社員意識調査の結果は偶然ではなかったのだ。皮肉にも、部下思いのリーダーのほうが、職場のモラルが下がってしまうのだ。

それはなぜか? 親和欲求型管理者の下では、規律が緩み「言ったもの勝ち」の文化になりかねない。実際、C氏は、ある部下が「この仕事は自分には向いていないから辞めたい」と申し出たのを、あっさりと認めてしまった。また別の部下の業績が不振でも、慰めるばかりで、厳しいことを言うことはなかった。

C氏のように、部下から好かれたいと強く思っている管理者は、特定個人の要望をきちんと断ったり、ダメなものはダメと言ったりすることができず、結果として他の部下たちの不公平感を募らせることになる。

また、部下たちは自分に何を求められているのかもわからなくなってしまう。マクレランドは「良好な人間関係を第一義と考える親和欲求だけが強い人は、管理者には向いていない」と断言している。

ちなみに、達成欲求だけが強い人もあまり管理者に向いていない。なぜなら、達成欲求の強い人は、自分で成し遂げることに喜びを感じてしまうからだ。つまり、部下たちにうまく仕事を振ることが苦手である。さらに、仕事ができない部下がいると、イライラしてしまい、きつく当たってしまう。達成欲求だけが強い人は、管理者よりは、プレーヤーでいたほうが活躍できる。

権力を誇示するだけの上司では、
部下の指示は得られない


では、「上下関係を盾に横暴な振る舞いをしている」権力欲求が強い上司がよいのかというと、まったくそうではない。権力欲求という言葉は誤解を招きやすいが、マクレランドが意図していることは、「人を動かすことで何かを成し遂げる欲求」である。そして、成し遂げようとしていることが、自分の恣意的な願望ではダメで、組織や社会の利益となるような目的でなくてならないと明言している。

さらには、リットビン=ストリンガーの研究によると、強い権力欲求を持った経営者が成功しているかというとそうでもないのだ。親和欲求をまったく持ち合わせていない経営者は、権威主義的、専制的、独裁的になりがちで、他人からの信頼や支持を得られないと言う。

つまり、権力といっても、会社から与えられた権力にすがっているようではいけない。自分自身の信念や実力を持って、他人を納得させ、動かさねばならない。

ということは、C氏も悲観することはない。親和欲求を大事にしながら、権力欲求を徐々に醸成していけばよい。権力というのは麻薬のような効果があり、少し得られると、もっと得たいという気持ちが大抵は沸いてくるものである。

最後に、ブレア前英国首相の言葉をC氏に贈りたい。

「リーダーシップとは、人々の責任を自分の責任として肩に背負い、自分の正しいと思うことに対し、たとえ不人気になろうとも、決断することである」


●次回は「何でもできるスーパーマンタイプ」なリーダーを紹介します。

筆者紹介

黒田由貴子 Yukiko Kuroda
慶應義塾大学卒業後、ソニーに入社。ハーバードビジネススクールにて経営学修士(MBA)取得。現在は、ピープルフォーカス・コンサルティング代表取締役として、組織やリーダー開発に関するコンサルティング業務を精力的に行っている。
http://www.peoplefocus.co.jp/professionals.html
http://pfcod.exblog.jp/

『ファシリテーター 甦る組織』 (芦崎治著)

 

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