デキるリーダーの落とし穴

(2009/07/24)
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熱血漢タイプが陥りがちな、

“カンチガイ”リーダーシップとは?


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熱いオトコが考える

部下と自分の理想的な関係!?


事業を成功へ導くことに強い使命感を持ち、日々、躍動的に仕事に取り組む、部門長のA氏。


“個々の力を最大発揮してこそ、組織は成功する”という信条を掲げ、部下指導にも情熱を注いでいる。仕事を成功に導いた部下は、思いきり褒め、喜びを分かち合う。失敗やミスをした部下には、雷を落とし、「どこがどう間違っていたのか」、とことん説教をする。これこそ、“熱血漢=A氏”が考える、“部下との理想的な付き合い方”である。そして、しおらしく説教を聞く部下を目の前に、A氏は、自身のリーダーシップに揺るぎない自信を持っていたのである。


ところが……


A氏の部下は、しおらしく聞いているのではなかった。説教の時間が少しでも早く終わるように黙っているだけにすぎなかった。部下としての言い分もあるが、何かA氏に言おうものなら、その何倍にもなって返ってくるのを知っているのだ。失敗を取り戻すため、一刻も早く仕事へ戻るには、A氏の過剰ともいえる部下指導を受け流すのが最善である。


いつのまにか、部下たちは「A氏の説教は長すぎる。始まったら、言い訳せずにやり過ごすのが一番」と、A氏を煙たがるようになっていったのである。

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優れたリーダーに欠かせないのは、
「確認」「質問」、そして「共同作業」


情熱溢れるリーダーは、すばらしい。あのダニエル・ゴールマンも、「優れたリーダーとは、人の情熱に火をつけ、最高の力を引き出す人」と定義している。ところが、A氏の場合は、自分の情熱の火を、部下に点火することができていなかった。それどころか、部下たちは火の粉を浴びないように防護服をまとい、なんとかA氏を回避するといったような、皮肉な状況を生み出していた。

では、A氏のような人は、“せっかくの情熱”をどうしたらよいのだろうか。

第一に、説教に入る前、失敗をした部下の心境や考えを確認するステップが必要である。

万が一、部下が自分の失敗やミスを軽く考えていたら、そこには雷を落としたり、「ミスの原因が何で、どんな影響をもたらしてしまうか」など、彼らが理解するまで言い聞かせ、「反省」をさせることが重要になってくる。

しかし、もし本人が、すでに事の重大さを認識し、結果を悔やんでいるのであれば、上司が拍車をかけるようにミスを攻めたてて反省を促してはいけない。そうすれば、上司自身はスッキリするかもしれないが、部下が得られるものといったら、実は、あまりないのである。

そこで重要なのが、部下と共にミスの挽回法を考えること。その復活劇にこそ、A氏の情熱は注がれるべきなのである。

そして、部下へ質問をしてほしい。

「どうして、その問題は起きたのか?」「その問題の本質は何か?」「その問題に対して、どう感じているのか?」「今、すべきことは何なのか?」などの質問を、真剣に聞くのである。その真剣さが、部下の心に、情熱の火を灯すことになるはずである。

「大人」と「大人」の関係で
組織にさらなる発展をもたらそう


ここで、ある自動車メーカーの工場長の例を紹介しよう。

ある時、自分が経営する工場から不良品が出荷されていたことが判明し、工場長は、その報告を社長にしなければならなかった。「品質が命」の自動車メーカーにおいて、不良品を出してしまったとあり、工場長は、社長に烈火のごとく怒られるだろうと震え上がった。社長にぶん殴られることも覚悟して、社長室のドアをノックした。

ところが、工場長から報告を受けた社長は、声も荒げずに「わかった。すぐに対策を考えよう」と言ったのである。工場長はびっくりした。

不良品問題が沈静した後日、工場長はその時の気持ちを社長に話した。すると、社長は笑いながら言った。

「私が君を殴ろうが殴るまいが、不良品問題は、すでに重大な問題であることをわかっているだろう。それとも、まさか君は、私に殴られないために、品質を管理しているというのか?」

A氏と工場長のエピソードを、「交流分析(TA)」という心理学の観点から分析してみる。それによると、人は誰しも自分の中に、「三つの私」を持っていることになる。

三つは以下の通りである。

親の自我状態:Parent『P』
大人の自我状態:Adult『A』
子どもの自我状態:Child『C』


つまり、部下を叱っているA氏は、「親(P)」の状態になっているといえる。自分が子どものころに見ていた親の姿を、無意識に演じているのだ。

また、社長に殴られることを覚悟していた工場長は、自ら「子ども(C)」の状態になっている。きっと、子どものころ、悪いことをすると親に殴られていたのだろう。

上司が部下に対して「親(P)」の状態でいることは、部下に「子ども(C)」の状態になることを強要しているに等しい。それが常態化すると、部下の上司に対する依存心が強くなったり、上司の顔色をいつもうかがったりという、アンバランスな関係になってしまうのである。

一方、「本来、不良品は出してはいけないもの」と工場長が理解していると考えていた社長は、親でも子どもでもなく、「大人(A)」の状態であると同時に、相手を「大人(A)」としても扱ったのだ。「大人(A)」の状態にあるとき、人は、自分の子ども体験から醸成される心理に影響されることなく、「いま/ここ」の情勢判断に応じて行動するという。

また、片方が「大人(A)」の状態でいると、もう片方も同等(「大人(A)」)の状態になりやすい。互いを尊重しつつ、冷静に、対処する関係を築けるという。それが、プロフェッショナル同士の関係というものだ。

振り返ってみてほしい。

あなたは、部下を子ども扱いしていないだろうか? これからは、自分が大人になることで、相互に、“大人の関係”を築いてみようではないか?

筆者紹介

黒田由貴子 Yukiko Kuroda
慶應義塾大学卒業後、ソニーに入社。ハーバードビジネススクールにて経営学修士(MBA)取得。現在は、ピープルフォーカス・コンサルティング代表取締役として、組織やリーダー開発に関するコンサルティング業務を精力的に行っている。
http://www.peoplefocus.co.jp/professionals.html
http://pfcod.exblog.jp/

『ファシリテーター 甦る組織』 (芦崎治著)

 

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