勝つFXのススメ


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FX上級者である読者のみなさんに、今、FX業界に何が起ころうとしているのか、そして、今後はどれだけの数のFX業者が淘汰されていくのか、このような情勢の下、“FX取引と長期的に付き合っていくためのヒント”について一緒に考えてみたい。

連載第1回目である前号では、FX業界の成り立ちとFX取引の魅力、そしてその投機性に触れた。2009年3月末現在、業界全体における投資家からの預かり資産は5611億円(社団法人金融先物取引業協会、資料)に及んでいる。つまり、投資家たちは、この金額に(場合によっては)数百倍のレバレッジを効かせ、1日に何度も売買を繰り返す取引を主流としているということになる。そのうえ、市場規模は数兆円単位で増殖している。まさに「投機」「オンラインカジノ」の世界である。

プロではないアマチュアの漁師が小舟で凪いだ沖へ出て、大物を釣り上げようとしているところへ、突然の嵐が訪れ大波に巻き込まれていくかのように、昨年のリーマンショックに起因する急激な円高相場で、多くの投資家は瞬時にして多額の預け資産を喪失した。事態を重く見た金融当局は、歯止めの効かない業者間のレバレッジ拡大競争に待ったをかけた。それが、 「過当投機の抑制」「証拠金倍率規制」だ。

この拡大したレバレッジが、アマチュア投資家の射幸心をあおり、健全な市場育成を阻むと判断した当局は、2010年8月1日から最大50倍まで、さらに2011年8月1日からは最大25倍までとする規制(2009年8月3日公布)を打ち出した。また、それに先立ち、投資家保護のための 「ロスカット制度の義務化」、および「投資家の預かり資産の全額信託保全」も義務付けた(2009年8月1日施行)。大々的に行われた「規制強化」であるが、この規制強化はFX業界にどのような楔を打ち込んだのだろうか?

実際のところ、現在のFX業界にはまだ目立った変化が見えていない。しかし、全額信託保全義務化と証拠金倍率規制は、店頭で行われる一般的なFX取引の仕組みにとっては、実のところ劇薬といえる。
FX業者は通常、投資家からの預かり資産をそのままインターバンク市場に担保金として預け替え、その資金の範囲内でのみ、インターバンク市場で取引を行うことが可能であった。ところが、規制後、投資家の資産は日本国内の信託銀行にて全額信託保全しておかなければならなくなったため、取引を継続するには投資家の預かり資産の代わりにFX業者が自己資金を立て替えてインターバンク市場に預けなくてはならなくなった。投資家からの預かり資産が増えれば増えるほど、多くの自己資金を立て替えなくてはならないのだ。

際限のない立て替え資金をどこまで用意できるかという、「資金調達の問題」
が浮き彫りになった。

“顧客が増えれば取引が増えて利益が上がるから問題はない”との考えもある。確かにその通りだ。ところが、当局はそこに証拠金倍率規制をかぶせてきた。

現在のFX取引は、「極端な高レバレッジ」「極端な低スプレッド」「取引手数料の無料化」の3本柱が主流 となっている。手数料は無料でも、極端な低スプレッドでも、極端な高レバレッジを効かせて取引金額を巨額化させ、市場実勢価格との差益を取ることでFX業者が多額の売上を計上できる仕組みだ。

しかし、8月に公布された証拠金倍率規制により、来年から再来年にかけ、最大レバレッジは、「50倍」、そして「25倍」と大幅に規制される。業者平均のレバレッジが100倍以上だと言われるFX業界において、たとえ預かり資産が増えても取引金額は、約1/2から1/4以下に急減することになる。売上も同様に縮小する可能性が高い。つまり、インターバンク市場に向けた自己資金の立て替え金調達能力に、急ブレーキがかかってしまうことになる。

では、投資家はこの問題をどのように見抜くことができるだろうか? 一社一社の財務内容を見ていくのは容易なことではない。そこで最も参考になりやすいとされるのが、3ヶ月に一度開示が義務付けられている「自己資本規制比率」である。

自己資本規制比率は原則、各社のホームページに開示されている。計算自体は専門的な話になってしまうが、要するに、数値が大きいほど会社の財務基盤に余力があるということだ。立て替え金が多ければ多いほど、預けている銀行や業者の破たんリスクが膨らみ、数値が圧縮されて表示される。

では、どのくらいの数値が望ましいのかということになるが、一概には判断できないものの、大雑把な目安として、せめて300―400%以上はお願いしたいところである。

ここ数年で、FX業界は様変わりするに違いない。「企業間の合併」「業界からの撤退」「新たなビジネスモデルの展開」も見られるだろう。2005年7月の金融先物取引法(現金融商品取引法)改正から4年。健全な市場育成に向けた第二の転換点を迎えたのだ。

今こそ、市場が「健全化する」時期である

投資家のみなさんが悲観する点など何もない。市場が健全化する良い機会なのだ。少なくとも、これから3年間は高レバレッジ取引は拡大しないだろう。そこで、今のうちから50倍以下の低レバレッジに慣れておく必要がある。自分の取引手法、運用方針に沿った長期的な付き合いができるFX業者をしっかりと選ぶ時期でもある。

FX取引が、ようやく本当の意味での「金融商品」と呼べるようになる日は近い。金融商品はゲームではないのだ。FX業者はあくまで公平な市場を投資家に提供し、市場と投資家の間に介在することにのみ資することがその役割であり、(公平であれば)提供するサービスに対する正当な対価が存在するべきものである。FX業者にもし適切な手数料体系がなければ、そこには見えない収益構造が存在するか、または、意図的にリスクをとって収益を確保する管理体制が存在している可能性が高い。投資家のみなさんには、慎重に公平なFX業者選びを行ってほしいと思っている。


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筆者紹介

相葉 斉 Hitoshi Aiba
1999年のFX黎明期より業界に従事。顧客の資産保全を追求し、円だけではなく外貨で預ける証拠金も保全する国内初、業界最高水準のFX信託保全スキーム「トラスト アカウント プロテクション®」を導入。現在、マネースクウェア・ジャパン 代表取締役副社長。
http://www.m2j.co.jp/

『果報を寝て待つFX』 (九々井 怜著)

 

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