(2009/10/10)
私たちは、自動販売機でコーラを買う時、その値段が100円か120円なのか、おおいに気になり「このリゾートの缶ジュース、ぼってるなあ」などとクレームを発したりする。生ビールを飲む時にも、それが300 円か500円か気になるし、3万円と3万5000円のジャケットやスーツ、バッグ類を買う時には時間を忘れて比較検討し、迷いに迷うはずだ。
ところが、3000万円と3500万円のマンションだったらどうだろう?
あるいは、3000万円のマンションを買う時に、登記に関わる諸経費や固定資産税、ローンの保証金や火災保険などで、結局300万円以上が上乗せされる現実については、どれほど厳しくチェックしているだろうか?
中古のマンションを買う時の、リフォーム予算150万円。
それが、ちょっとオシャレなカーテンにすることであと5万円、やっぱりエアコンも掃除しなくていいやつに替えようかなで15万円、それだったらリビングに床暖入れちゃおうかな、などとエスカレートしていくことも、ほとんどの不動産購入経験者に共通する傾向ではないだろうか。
人間には、このように「大きな額になればなるほど、細部に無関心になってしまう」クセがある。 だから、官僚たちが1兆円を使う時、平気で1000億円の無駄遣いをすることも、日本国の首相が40兆円という予算を組む時に、まったく細部が分かっていないだろうことにも、うなずける気がしてしまう。
300円や3万円の感覚なら慎重になれるけれど、30万円、300万円となると熱くなってしまう。そうした普通の(正しい)感覚を持つあなたが、3000万円の物件を買うか買わぬか、判断するためには、どうしたらいいだろう?
結論から言えば、慣れるしかない。
しかし、3000万円の買い物に慣れろと言われても、そんなに何回も買い増したり買い替えられる人は稀だろう。
ならば、徐々にその金額を上げて、慣れていくようにする一手だ。
大きな額でもアタマをクールにして判断を間違わないようにする「自分研修」をしよう。
では、どういう順番で練習していったらいいかをシミュレーションしてみよう。まず、私の例を眺めてもらう。
「賃貸」から入って「建て売り」を買い、結局「家を建てる」ことになった。
私は、東京都世田谷区のど真ん中の公務員宿舎で生まれ、その後、両親が中央区日本橋にある清洲橋のたもとにあるマンションを購入するまで、公務員住宅で育った。20代の後半に会社が社宅として用意してくれた勝どき橋のマンションで一人暮らしをはじめ(会社からの補助もあり2DKで実質家賃16万円程度)、結婚して子どもができてから杉並区永福町にある建て売り住宅を買って移り住んだ。はじめて住宅を買ったのは、33歳ということになる。
清洲橋の両親の家も、勝どき橋の社宅も、目の前に隅田川の流れが見え、ときどき舟も通るし、抜群に気持ち良かった。とくに、勝どき橋のアパートは北側にベランダがあり、腰の高さの物干し台に東急ハンズで買ってきた板を渡してバーカウンターとしたから、銀座の夜景と東京タワーを眺めながら仲間やお客さんと飲むこともできた。黄昏時からファストフードをつまみに飲み始めて、東京タワーの灯が消えるのをカウントダウンするのである。
しかも、この部屋は会社から歩いても30分以内。職住近接の極みだった。
だから、20代から30代のみなさんへの私のお薦めは「まず、部屋を借りること」。その際の留意点は、以下の3つ。
(1)一点豪華主義で、なにか特徴のある部屋を探そう。(眺望とか、大きな桜がある小学校に面していて、春、1週間だけ花見が最高とか……もし、そうなら、この1週間の間に彼女を呼ぶためにすべてを賭けよう!笑)
(2)会社で働くことが嫌いじゃないのなら、なるべく近い場所に住もう。(上司や同僚が時々泊まりに来てうるさいかもしれないが、たぶん感謝もしてくれる)
(3)もちろん、これも1点豪華でいいのでリフォームをしよう。建築家やインテリアコーディネータの友人がいるといい。(同じ部屋に住み続けたとしても、リフォームを何度かすれば、『お宅通(住まいの事情に詳しい「通」)』になれる資格がある。
もちろん、何度が住み替えることができれば、だんだん家賃の「相場観」がついてくる。
ちなみに、私は1989年当時、マンションと(建て売り)戸建ての相場が一緒だということに気づき、建て売りを買った。でも、バブルの本格的な崩壊はそれから10年後の99年だったから、売るときには半額になった。8000万円(ちなみに不動産会社はバブルの頂点の時期、この物件を1億5千万円で売ろうとしていたのだ! アホか!!)が4000万円になったのだが、これを4000万円の損と考えるのか、10年間、家族5人で住んだので年間賃料400万円(月額33万円)で借りて良かったと判断するかは、考えようだ(思わず顔面まわりがヒクヒクと疼く)。
冷静に(あとづけで)計算してみれば、建坪23坪(76平米)の4DKだったから、平米4300円の賃料ということは、いまだったら青山辺りに住める相場だ。
途中、2年半ほどヨーロッパに暮らした間、貸していた賃料も17万円程度だったから、おおいに開きがある。
やっぱり、大損こいたのであった(爆笑。ここは笑ってごまかすしかない!)
さてさて、あなたなら、どうするか?(もっとも、もう買っちゃったかもしれないけれど)
まず、東京の地価はもはや上がることはないと思う。
空家率が増えているのに、まだまだ東京にはタワーマンションが建つと言う。ましてや、地方都市では、下がり相場が続きそうだ。成熟社会に入ったからである。
ということは、新築のマンションも戸建ても、買った瞬間から値を下げていくということだ。プロも指摘しているように、十分にリーゾナブルな価格に下がった中古の物件を丁寧に見て、他人に貸した場合の賃料から(利回り5%とか7%で逆算して)相場を割り出していくのが妥当だろう。
しかし、なんといっても「住宅を買う」ことには「夢」がある。だから、私も買うのは止めない。その場合の必要条件は一つだと思う。
不動産業者の誰もが認める黄金律。
1に「立地」、2に「立地」、3、4が無くて、5に「立地」である。
駅から10分が相場だった時代は終わった。時代のリズムとテンポが上がったからだ。これは、変化が激しい成熟社会の特徴。ならば5分以内、がいいと思う。
もう一つ、十分条件として、子育てするのにタワーマンションは向かない。緑の中に建つ低層マンションか戸建てを奨める。とりわけ神社の緑は「気」をくれる。
独身であったとしても、あなたが家に帰った時「気分がいい」のが大事だから。そうして慣れてきたら、40代から50代で「家を建てよう!」
●次回は「藤原流 <株の話>」をお届けします。
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藤原和博 Kazuhiro Fujihara


