私は、この「ヤマガタ事件」を通して二つのことを学んだ。
一つは、いわば、上手な「言い訳の仕方」である。
自分が数百万円をつぎ込んだものが水泡に帰したとは思いたくない(笑)!
だから、こう考えることにした。
「ヤマガタの値段は、私の買った値段のまま、眠れる森の美女のごとく、眠っている」……ク、ク、ク、かなり苦しいが、こう思うしかないだろう(冷や汗)。
ようは、売ろうとしなければいいのである。
そうすれば、私の心の中では、「スカイサイクル」はいつまでも90万円であり、「泥棒」や「野外音楽会」はいつまでも150万円なのだ。
二つ目に、ブームとなるような作品を買うことより、もっと面白い画家との付き合い方を発見したのだ。
私が住んでいる家については、その建築の一部始終を『建てどき』という本に描いた。現在は、ちくま文庫から『人生の教科書[家づくり]』(解説:隈研吾)として出版され、家を建てる普通の施主の間で隠れたバイブルとなっている。この本を片手に工務店やハウスメーカーを訊ねると、一目置かれ、必ず得をするからだ。
ダマされない家づくりの極意が詰まっている。
家の壁には、ところ狭しとヤマガタやティンを掛けている。
それに加えて、居間の北側の壁に大きなスペースが空いたので、そこに3枚組1セットの100号くらいある絵が欲しかった。
私は、友人の(同世代の)画家に、絵の制作を発注するという方法をとった。
パトロンであるメディチ家が、ダ・ヴィンチやラファエロに絵を描かせたように、コンセプトを示して自由に描かせるのである。
バッカみたいに高くつく、と思うだろうか。
じつは、この方法は、名のしれた作家の絵を買い求めるよりはるかに安くつく。
しかも、画家とは懇意になれるし、そこからまた物語が生まれる。
じっさい、若手の画家にはあまり「発注される」機会はないから、メチャクチャやる気を出して作品を制作してくれるはずだ。
私の場合は、3人の子の干支(えと)と生まれた都市を象徴する図を入れて欲しいこと、妻が好きな花を散らして欲しいこと、あとは色味はこんな感じで、とだけ頼んだ。全体の構図はおまかせ。下絵ができたら、それを見せてもらって本格的な塗りに入る。絵が映えるよう、額もついでに創ってもらう。
家族全員で画家の河口湖のアトリエに、途中経過を覗きに行ったのも楽しかった。
なにより、子どもたちの刺激になる。たぶん、買っちゃった場合の百倍も。
あなたも、気に入った作家(画家でなくても、若手のデザイナーや建築家でもいい)に眼をつけたら、パーティーなどで「絵を描いてもらいたいのですが……」と話しかけてみよう。きっとギョッとされる。しかし、悪い顔はされない。
さあ、あなた自身のパトロナージュのはじまり、はじまり。やり方によっては、共同制作のカタチをとることもできるだろう。
人によっては、2万円でも、20万円でも、喜んでやってくれる。
世界の誰も持っていない、あなただけの一品である。
●次回は、「犬は『愛玩動物』でいいか?」をお届けします。
一つは、いわば、上手な「言い訳の仕方」である。
自分が数百万円をつぎ込んだものが水泡に帰したとは思いたくない(笑)!
だから、こう考えることにした。
「ヤマガタの値段は、私の買った値段のまま、眠れる森の美女のごとく、眠っている」……ク、ク、ク、かなり苦しいが、こう思うしかないだろう(冷や汗)。
ようは、売ろうとしなければいいのである。
そうすれば、私の心の中では、「スカイサイクル」はいつまでも90万円であり、「泥棒」や「野外音楽会」はいつまでも150万円なのだ。
二つ目に、ブームとなるような作品を買うことより、もっと面白い画家との付き合い方を発見したのだ。
私が住んでいる家については、その建築の一部始終を『建てどき』という本に描いた。現在は、ちくま文庫から『人生の教科書[家づくり]』(解説:隈研吾)として出版され、家を建てる普通の施主の間で隠れたバイブルとなっている。この本を片手に工務店やハウスメーカーを訊ねると、一目置かれ、必ず得をするからだ。
ダマされない家づくりの極意が詰まっている。
家の壁には、ところ狭しとヤマガタやティンを掛けている。
それに加えて、居間の北側の壁に大きなスペースが空いたので、そこに3枚組1セットの100号くらいある絵が欲しかった。
私は、友人の(同世代の)画家に、絵の制作を発注するという方法をとった。
パトロンであるメディチ家が、ダ・ヴィンチやラファエロに絵を描かせたように、コンセプトを示して自由に描かせるのである。
バッカみたいに高くつく、と思うだろうか。
じつは、この方法は、名のしれた作家の絵を買い求めるよりはるかに安くつく。
しかも、画家とは懇意になれるし、そこからまた物語が生まれる。
じっさい、若手の画家にはあまり「発注される」機会はないから、メチャクチャやる気を出して作品を制作してくれるはずだ。
私の場合は、3人の子の干支(えと)と生まれた都市を象徴する図を入れて欲しいこと、妻が好きな花を散らして欲しいこと、あとは色味はこんな感じで、とだけ頼んだ。全体の構図はおまかせ。下絵ができたら、それを見せてもらって本格的な塗りに入る。絵が映えるよう、額もついでに創ってもらう。
家族全員で画家の河口湖のアトリエに、途中経過を覗きに行ったのも楽しかった。
なにより、子どもたちの刺激になる。たぶん、買っちゃった場合の百倍も。
あなたも、気に入った作家(画家でなくても、若手のデザイナーや建築家でもいい)に眼をつけたら、パーティーなどで「絵を描いてもらいたいのですが……」と話しかけてみよう。きっとギョッとされる。しかし、悪い顔はされない。
さあ、あなた自身のパトロナージュのはじまり、はじまり。やり方によっては、共同制作のカタチをとることもできるだろう。
人によっては、2万円でも、20万円でも、喜んでやってくれる。
世界の誰も持っていない、あなただけの一品である。
●次回は、「犬は『愛玩動物』でいいか?」をお届けします。
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藤原和博 Kazuhiro Fujihara


