(2011/9/24)
今回の相談者
卸売業 会長 佐藤春夫(78歳) 妻 里子(76歳)
この危機は回避できるか<その1>
佐 藤: あの、先生でいらっしゃいますか。
税理士: はい。
佐 藤: 初めまして。ご連絡させていただきました佐藤でございます。本日はお忙しい中、よくぞお時間を取ってくださいました。
里 子: 妻の里子でございます。今日はありがとうございます。
税理士: こちらこそよろしくお願いいたします。どうされましたか。
佐 藤: にっちもさっちもいかなくなりまして、お伺いした次第です。私は31歳の時に会社を興しました。今年の3月で第47期を終えることができました。
税理士:すばらしい業歴ですね。
佐 藤: ありがとうございます。ところが中身はグチャグチャなのです。これまで3人の税理士先生にご指導をいただいてきました。そのときそのときによかれと思うことを、ご指導通りに従ってきましたが、結果としては不本意な状況になっております。
税理士: 決算書を拝見させていただけますか。
佐 藤: どうぞ、3期分お持ちしました。
税理士: 社長は御子息ですか。
佐 藤: はい、2005年に引き継ぎました。
税理士: 失礼ですがおいくつですか。
佐 藤: 息子は48歳で私は78歳です。
税理士: 会長が30歳のときのお子さんですか。その翌年に創業されたのですね。
佐 藤: そうなのです。はじめは会社に勤めていたのですが、景気のいい時代です。取引先に進められてその気になりました。長男も誕生し、よーし、やるぞ! という思いです。力がみなぎっていました。
税理士: そのころは社会全体が楽しかったでしょうね。ご長男はいつ入社されたのですか。
佐 藤: 大学を卒業してすぐです。
税理士: 外でのお勤め経験がない。入社後も修行には出されなかったのですか。
里 子: はじめは反対したのです。これはお父さんが作った会社だから、あなたがこの会社にしばられることはないの。あなたはあなたの意思で人生を切り引けばいいのよ、と諭したのですが、「いや、僕はお父さんを尊敬しているんだ。一生かかってもお父さんみたいにはなれないかもしれない、でも長男だから背中を見て行きて行きたいんだ。だからお父さんの会社に入るよ」というようなことを申しましてね。
佐 藤: その言葉にほだされて入社させてしまったのです。
税理士: させてしまった……後悔のようなお言葉ですが。
佐 藤: お恥ずかしい限りです。引き継がせた2003年当時とは、かけ離れた息子になってしまいました。段々経営の中身がわかってきたのか、当時、本当にわかっていなかったのか、知るよしもありませんが、ある時から「こんなボロ会社、俺に引き継がせやがって」などと言うようになりましてね。
里 子: ボロ会社という言葉を息子に使ったのは顧問税理士だったのです。
佐 藤: 「こんなボロ会社がよく維持されているものだ。君のお父さんはこんな会社を君に継がせてひどい人だな」と息子につぶやき、私には「会長、あの息子さんは経営力が全くないから何とかしたほうがいいですよ」と私にささやいていたのです。こうしていつの間にか私と息子は精神的に距離ができるようになり、今では顔を合わせることすらなくなりました。
里 子: そしてその様子を眺めながら、会計係が不正を働いていたのです。
税理士: 税理士はそのことを知らなかったのですか。
佐 藤: 会計係が連れて来た税理士だったのです。おそらく仲間になっていたのでしょう。そこを見抜けなかった私が甘かったのです。
税理士: 被害総額はどれくらいですか?
佐 藤: 5000万円は超えると思います。そこまで調べて力が抜けました。
税理士: 事件ではありませんか。
佐 藤: もちろん訴えるつもりでした。でもその準備をいよいよ整えたとき、会計係が死んでしまったのです。
税理士: 決算書を拝見しますと、3期連続して債務超過ですが、納税はなさっている。申告書に欠損金の明細書はついていません。ということは10年以上前からこうした財務内容だったのでしょうか。
佐 藤: おっしゃる通りです。
税理士: ということは少なくとも2001年以前から、この傾向だったわけですか。息子さんが「知らなかった」というのは、いかがなものでしょうね。
里 子: 入社したときから「こんな会社なのよ」と決算書は見せてきましたから、知らないわけがないのです。
佐 藤: 理解をしていなかったということなのでしょうね。
→次ページでは、決算書をさらに詳しく分析します。

山下明宏 Akihiro Yamashita


