納税上級者が資産を増やす

(2012/1/24)
日本国憲法

第26条1項「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」
同2項「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、これを無償とする。」 

第27条1項「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。」

第30条「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。」



車好き社長: 納税については義務だけなのですね。だから、権利を入れようとしたのでしょうか。

税理士: 義務ではあるが、同時に権利でもあるという考え方に、憲法起草の時点で納税は入っていなかった。なぜか。そこを考えることは重要ですね。私も学者でないので、深いことはわかりません。これをきっかけに考えて行こうと思います。

車好き社長: 何だか、ややこしい話になっていきそうですね。今になってみれば、納税にも権利があると分かったのでしょうか。しかしそうなら「『国民』が主語である」ということは外せないのではないでしょうか。国民にとって義務である納税が、納税者を主語にすると権利になるというのは、わかりにくいですよね。他の2つの義務に並記される権利とは、同じ性質のものではない気がします。

税理士: つまるところ22大綱の説明には無理があったのでなないでしょうか。議会制民主主義を支えているのは国民であって、納税者ではありません。ところが22大綱では、 「議会制民主主義における税のあり方は、あくまでも税を納める主権者たる国民の立場に立って決められるべきものです。」 と、税を納める人だけが国民として主権を持つ、と誤解されるような説明になっているのです。

車好き社長: 本当ですね。税を納めない人だって国民ですよね。

税理士: 正確には、税を納める必要のない人だって国民です、でしょう。

車好き社長: ああ、そうでした。でも納める必要があるのに、納めていない人も、やはり国民ですよね。

税理士: 確かに……。

車好き社長: すみません、屁理屈言って。でもこうした内容のことを、この2年間、今さらという気もするのですが、なぜ重要事項として議論されてきたのでしょうか。

税理士: そうですね。さんざん議論されたのですから、その必要があったということでしょう。しかし議論は急激に尻すぼみとなってしまった。

車好き社長: その原因が、「代表なくして課税なし」ですか。

税理士: 原因は他にあったと思われます。国を形作るといってもいい税制の基本法を「最大に見直し」するというのですから、もっとじっくり考えよう、ということになったのでしょうね。震災の影響も大きいと思われます。思考の一切を振り出しに戻すしかなかったのです。

車好き社長: もし策定されていたら、これからどうなったのでしょう。

税理士: 分かっていることは、策定されてもされなくても、大増税の時代がやってくるということです。ですからその前に、基本法を分かりやすくして、納税者に十分な権利を付与しようとしたのでしょう。

車好き社長: なるほど! 大きな鞭で打たれる前に、甘い飴を与えようと思ったのですね。

税理士: そうとも言えます。しかしこの大きな飴玉を、完成させることはできませんでした。22大綱の表表紙には「―納税者主権の確立に向けて―」というサブタイトルがついています。サブタイトルが付されているのはこの年の大綱だけです。私も浅学ですが、国民主権の国に突然「納税者主権」という題目が掲げられた。社長がおっしゃったように、国民が主語なら「―国民主権の確立に向けて―」となり、いったい何のことでしょう、という話になってしまいます。国民と納税者の違いとは何か。わかりやすく国税通則法を書き換えようとした意図はどこにあったのか、議論を重ねるうちに、却って当事者たちが分からなくなってしまったのかもしれません。

車好き社長: 飴がもらえないまま、大増税の時代が来るかもしれないのですね……震災を理由にしましたが、やはり車は買わなくてよかった。税が上がれば車の返済どころではありませんからね。

税理士: 何言っているのですか、社長。お伝えしたあの買い方なら、税がいくら上がっても、無税でやっていけるのですよ。


筆者紹介

山下明宏 Akihiro Yamashita
1963年東京都生まれ。税理士。現在、山下明宏税理士事務所 所長。TKC東京都心会所属、2011年より同会会長。「税理士が日本経済の土台を支える」という使命感を持ち、税理士業界の改革と中小企業の支援に没頭する毎日である。とりわけ次世代を担う税理士と経営者の育成には、真摯に取り組んでいる。
http://www.tkcnf.com/yamashita/pc/
http://www.berg-act.co.jp

『テキトー税理士が会社を潰す』 (山下明宏著)

 

back number

HOME
presented by 幻冬舎メディアコンサルティング