納税上級者が資産を増やす

(2012/1/24)

今回の相談者
IT企業社長(車好き) (46歳)


平成24年税制改正を確認しよう


車好き社長: 先生こんにちは。ご無沙汰しております。

税理士: いやぁ本当にお久しぶりです。お元気ですか。

車好き社長: 元気というほどでもありませんが、何とかやっております。

税理士: ちょうど1年ぶりでしょうか。

車好き社長: そんなところですね。2年前の暮れに強烈なヒントをいただいたにも関わらず、手持ちの法人が1社しかないことを最後に告げられ、悔しい思いをしました。

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[第十八回] 無税で最高級車を乗り回そう<その17>(2010/12/24)
http://www.biz-mag.jp/tax/_201012/

税理士: そうでしたね。でも社長、お持ちの会社が1社でよかったですね。

車好き社長: はい。しかし、あのあと2011年3月までとされていた「中小企業金融円滑化法」が2012年3月まで延長されると聴き、急いで法人を2社設立しようと動き出していたのです。

税理士: お越しにならないと思ったらそんなことを企てていらしたのですか。

車好き社長: あんな上手い話を聞いたら実行するしかないでしょう。

税理士: それで……?

車好き社長: 動いてはいたのですが、年度末にかかって何だかんだと忙しくなり、手が付かなくなってしまっていたところに、あれが起きました。

税理士: 3.11ですね。

車好き社長: あれで、2ヶ月はまったく経済が止まってしまいましたでしょう。それですっかり諦めがつきました。

税理士: 社長とその話ができていたころは、景気に底力が出て来ていたときでしたよね。年明け2011(平成23)年はきっといい年になると、年明けから手ごたえを持って経営に臨んでおられた中小企業経営者の方も多かったはずです。

車好き社長: そうでした。しかし先生、なんでしょう、私たちの夢なんて儚いものですね。あの震災が起きなかったら会社を設立して、何とかしてこの3月までに無利息で借入を起こして、都合3,000万円調達して「911スピードスター」を手に入れていたでしょう。しかし、あの日で一気にその熱も消えてしまいました。そんな程度の夢を、わが夢だと思って過ごしてきた私は、なんて愚かというか、他愛無いというか、小さな生き方をしていたのだろうと、わが人生を顧みましたよ。

税理士: もう車好きは終わったのですか。

車好き社長: いえ、一時はそうかと思ったのですが、震災から約1年が経つわけですが、元気に、普通に生きている自分を眺めていると、また車が欲しいなと思うようになってしまいました。何てことでしょう。今の私は、もうあのショックを忘れているのです。そうした自分を虚しく感じます。こんなことでいいのでしょうか。

税理士: 社長はそれだけ車が好きだという証拠ではありませんか。とことん車好きでいてください。ただし、やはり形あるものは姿を変えるのが常。私の同業者にも被災地で、納車されたばかりの新社を潰してしまった方が何人かおいででした。そうしたいざという覚悟は必要ですよね。

車好き社長: 常に想定しておかなければならないわけです。

税理士: しかし自分だけはそうならないと思ってしまうのも人の常。

車好き社長: 愚かですね、人は。しかし身の丈は守る、これはわかるけれども、少しだけ背伸びをしたいから、借りてでも自分の欲求を満たそうとする。実は、これこそが経済の活力なのだと思うのですが。

税理士: その通りですよね。ですから、そうした背伸びは成長の因になるわけですから、決して悪いことではないのです。但しその背伸びには時間という制約が付されるのです。いつまでもつま先だけで立ち続けていられるわけがありませんよね。それと同じです。そして、自分の力で我慢できるだけが、与えられた時間だということではない、ということを今回の震災は教えてくれましたね。

車好き社長: そうした自己の想像を超えた事態が起こっても、「そんなはずではなかった」という言葉を口にするなよ、口にも、心にも思うなよ。ということですね。

税理士: そうですね、そうした強く淡々とした心を、日ごろから造りあげなければならないのが、経営者の仕事なのでしょうね。

車好き社長: あの震災がもう少し遅く起こったら、私は返済できない資金を3,000万円も抱えてしまうところでした。ですから、ラッキーだったと一安心したのですが、そうした態度からして既にいけないわけですね。そしてのど元も過ぎないうちから、また同じような物欲を抱いてしまう。

税理士: しかし「自らを省みる」それだけでも尊いことではないでしょうか。

車好き社長: ありがとうございます。ところで先生、今年も税制改正大綱がでましたね。

税理士: そうですね。2011(平成23)年12月10日に発表されました。実はあまり目新しいものがないのです。

車好き社長: しかし復興のための財源は必要ですし、消費税も上がることになりました。何も目玉がないということはないでしょう。

税理士: ええ、本来ならそうでしょうね。民主党が政権を担った最初の税制大綱は、相当な注目を浴びましたが、当時と比べると、急速に注目度が失せてしまったような大綱になっています。政策が公約通りに進まなかったこともあるのでしょうし、震災が起こったこともまさに想定外だったのですから仕方ない面もあるのでしょうが。当初は112頁あった大綱は翌年には139頁に膨らみましたが、今回は88頁でした。

車好き社長: しかし、仕方ないでは、国民は納得しないでしょう。

税理士: おっしゃるとおりです。方向性としては目新しいものはないのですが、税と社会保障の一体化は避けて通れない道のようです。そうなると制度の抜本的な改革が、どうしてもなされなければなりません。今回は、地域社会のリーダーでもある中小企業経営者の皆さんに、税制を考える上での大きな視点を押さえておいていただくことにいたしましょう。

車好き社長: それは大切ですね。税が上がった、下がったと、ただ、それだけに敏感になり、それを受けてどう節税するかという、イタチごっこみたいなことを繰り返すだけでなく、税の成り立ちみたいなところから考えてみることも、たまには必要ですね。


→次ページでは「税制改正大綱」を確認します

筆者紹介

山下明宏 Akihiro Yamashita
1963年東京都生まれ。税理士。現在、山下明宏税理士事務所 所長。TKC東京都心会所属、2011年より同会会長。「税理士が日本経済の土台を支える」という使命感を持ち、税理士業界の改革と中小企業の支援に没頭する毎日である。とりわけ次世代を担う税理士と経営者の育成には、真摯に取り組んでいる。
http://www.tkcnf.com/yamashita/pc/
http://www.berg-act.co.jp

『テキトー税理士が会社を潰す』 (山下明宏著)

 

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