納税上級者が資産を増やす

(2009/12/24)
今回の相談者
IT企業社長(車好き) (45歳)


無税で最高級車を乗りまわそう <その5>

社長: 気楽な経営のできた1年間で、身も心もゆっくり休まり、じっくり考える時間を持てました。そこで、今日は次なる構想を聞いていただきたいのですが、よろしいでしょうか。

税理士: なんでしょう。

社長: フェラーリを買いたいのです!

税理士: えっ? フェラーリですか!? それはまたすごい夢をみましたね。あの車は高いですよ。お金を借りて買うのですか?

社長: もちろん高いのはわかっています。私は車好き社長ですから。今回の計画では借りずに、稼いだお金で買いたいと思います。前回で、ケイマンSの購入資金を借入金の返済期間内に捻出する力をつけさせてもらいました。休み時間までいただき、気力、体力ともに充実しました。今度は、これまで通り、まずケイマンSを借り入れて購入し、借入金の返済期間内に購入資金を捻出し、減価償却費の償却期間内にフェラーリの購入資金を稼ぎ出したいと思います。

税理士: ケイマンSは借り入れをしてこれまで通り返済する。その期間中に稼ぎ出したお金でフェラーリの購入資金を蓄えるのですね。すばらしい発案ですが、結構大変な計画になりますよ。あなたはお金持ちなのですから、ケイマンSは無理せず、借りずに現金で購入されてはいかがですか?

社長: 資金量の問題です。確かに金利はかかりますが、877万円を自分が乗る車に投資して回収するのに6年間かけるのは、もったいない気がします。他人のお金を運用させてもらったほうがお得だと思うのです。

税理士: なるほど。ご自分なら、車を購入するために発生する支払金利以上の投資効果を別にあげられるということですね。資金量が判断の決め手になったようですが、どの位になりますか?

社長: 減価償却費は6年間で

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と、推移します。
投資した877万円のうち、最大366万円までを、1年後までに回収できるということですから、511万円は塩漬のままです。以下そのように表にしてみますと、

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2,013万円の資金量を必要とする運用だということになります。


税理士: これなら別に投資先を考えようということですね。いよいよたくましく成長する経営者の仲間入りですね。わかりました。よろこんでお手伝いさせていただきます!

社長: ありがとうございます。よろしくお願いします!

税理士: ところでフェラーリもいろいろ種類があるんですよね。

社長: よくぞ聞いてくれました。


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ちなみに「Ferrari 599」が、新型12気筒モデルです。

税理士: 最後の「Ferrari 599」をご希望ですね。

社長: さすがですね。なんでわかるんですか?

税理士: なんでって、自分で説明してるじゃないですか。

社長: (笑)そうですね。

税理士: それでは夢に向かって出発しましょう!

社長: オーッ!

税理士: 購入資金3,560万円は6年間で用意しますか?

社長: はい。

税理士: ケイマンSの返済資金調達は?

社長: 前回同様、返済期間内に回収します。

税理士: わかりました。購入資金は6年間で単純に割ると、5.933.333円です。そこでこれまでのルール通り5年間は593万円の均等で、最終年は端数を調整して595万円を積み立てることにしましょう。

社長: わくわくします。

税理士: そうですか? 結構な買い物ですよ。これまでとはケタが違います。ちなみに減価償却費でその違いを比べてみましょう。
フェラーリ599の減価償却費は6年間ではこんなふうに推移します。

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比較しやすいように、おさらいでケイマンSの減価償却費もみておきましょう。
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いかがですか? 買い物の大きさがわかりますか?

社長: やはりフェラーリは高いですね。償却費の違いに価値の高さを感じます。 ますます欲しくなりました。

税理士: 強気ですね。しかし、この経済環境の下、あなたのような方がいなければ、社会に活気が湧きませんよね。頑張って調達資金をゲットしてください。

社長: オーッ!

税理士: 計画1年目の必要利益を算出します。

社長: ちょっと待ってください。今までは必要売上高って言っていませんでしたか?

税理士: そうですよ。今回からは必要売上高を求める前に、必要利益を計算します。

社長: どうしてですか?

税理士: これまでは、借りた分の返済と維持費のみを念頭において経営していればよかったですが、今回は、事業を大きくする計画です。大きくするためにはお金を回すだけの売上をみていてはダメだということです。

社長: はーぁ……そうですか。

税理士: 必要利益は毎年変わります。1年後の必要利益を算出してみましょう。計算するためには以下の条件が必要です。返済資金175万円、購入資金積立金593万円、減価償却費366万円、税率は40%とします。この条件を式にして必要利益を求めます。

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社長: 初年度に670万円の利益が必要なんですね。

税理士: そうです。この利益を残せなければ、6年後に望みの車を手にすることはできないのです。

社長: 頑張ります!

税理士: ではこの利益を残すための必要売上高を次に求めます。

社長: これは今までの計算方法ですよね。

税理士: 返済資金としていたところを必要利益に変えていただき、最後に減価償却費を追加してください。後は同じです。

社長: それならこうでしょうか。

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※支払利息は<その2>の回を参照。

税理士: その通りです。では車両購入時のB/Sを確認してから、1年後のB/S P/Lを作成してみましょう。

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社長: いやぁ、さすがに売上高がかさみますね。

税理士: 車を返済するための必要売上高から、成長のための必要売上高に視点を変えたからですね。

社長: 現金・預金が594万円になっています。

税理士: 元々1万円ありましたから、約束通りきっかり593万円増えたんですね。 本来B/Sは、決算日時点の財政状態を表示しますから、厳密には以下のように表示されます。

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しかしここでは積立資金の推移をわかりやすく見せるために、税金は決算時点で支払ったものとしてB/Sを組み立てます。

社長: 593万円の購入資金を積み立てるために268万円も税金を払うんですね。なんかもったいないなぁ。

税理士: そうですね。その気持ちわかります。この税金がもったいなくて、節税と称して利益を使ってしまう経営者が沢山います。年度、年度でせっかく稼ぎだした利益を使いきってしまうので、ちっともキャッシュが溜まっていかないんですね。そのため経営は一向に楽にならないし、将来に備えた、準備など到底できないのです。

社長: 目標達成のための我慢ですね。

税理士: それでは2年目に進みましょう。必要利益を算出してください。

社長: 変わるのは減価償却費だけですから、

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これでどうでしょう。

税理士: 正解です。では続けて必要売上高を計算しましょう。

社長: それならこうでしょうか。支払利息が変更していますね。

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税理士: すばらしい。ではB/SとP/Lを作りましょう。

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社長: 売上高が上がっています。

税理士: 償却費が少なくなっていますから、その分必要売上高が高くなるわけですね。

社長: その分、法人税等も増えていますね。

税理士: そういうことです。減価償却費は年々下がりますから、この傾向は続きます。

社長: これだけの売り上げを稼ぎ、かつ利益を残すのは大変ですが、体は疲れても精神的なものが、ぐっと楽になりました。

税理士: どういうことですか?

社長: 2年後にもう、借入金残高以上のキャッシュを残せてしまえたからです。突然のアクシデントが起こっても、世間様にご迷惑をおかけしなくて済みます。

税理士: なるほど。経営者として持ち続けていなくてはならない大事な視点ですね。敬服しました。

社長: もちろん私の目標はここではありません。

税理士: そうです。さあ3年後に進みましょう。必要利益を計算してください。

社長: はい。先ほどと同じように……

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ついでに必要売上高は……

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でいかがですか?

税理士: すばらしい。ではB/SとP/Lを作りましょう。

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社長: 面白いなぁ。

税理士: なにがですか? 社長: 積み立てるべき金額は年々同じなのに、税引後の当期利益は、積み立てるべき金額より低くて良かったり、高くなければならなかったりするからです。

税理士: そうですね。これが税が会計に絡むためにおこる計算の面白さです。経営の面白さと言ってもいいですね。ここら辺をじっくり眺める力をつけると、計数管理能力をつけないで経営することが、いかに危険であるか、見えてきますよね。銀行などの経験則によれば、計画書を作成している企業は10社に1社あるかないかだそうです。仮に計画を作っても、その通り実行している企業は、私たちの経験則でも10社に1社の半分もないでしょう。中小企業の経営は、だからいつまで経っても厳しいままなのです、とも言えますね。

社長: 経営は決して思うようには運ばないものだとは理解していますが、「だから計画たてても仕方ない」ではなく、「だからこそ計画を立てなければならない」という気がしてきました。

税理士: そういう感性のある社長が日本にあふれてほしいと願って、日々現場に向かっているのがIT時代に生きる税理士です。さあ、そこで4年後に進みましょうと言いたいのですが、ここでちょっと補足をしておきます。

社長: はい、なんでしょう。

税理士: 実は、3年後の決算から、消費税の納税義務が発生します。なぜかというと2年前(1年後)に売上高が1,000万円を超えていたからです。しかし、このシミュレーションでは、消費税のことは無視して話をすすめていきますのでご了承ください。

社長: そうか。実際の経営では、これに消費税まで加味して計画を立てていかなければならないのですね。しんどいなぁ。今は頭がこんがらがるだけですから、お願いです。どうぞ無視してください。

税理士: では4年後の条件をそろえてください。

社長: さっそく計算します。

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税理士: 安心して見ていられますね。続けてB/SとP/Lを作りましょう。

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社長: 計画通りに売り上げが立って、計画通りに購入資金がたまっていく。経営に自信がついていきますね。

税理士: 折り返しを過ぎただけですから、喜ぶのはまだ早いですよ。経営環境はいつ激変するかわかりませんからね。

社長: そうだ、リーマン・ショック後の経済に生きているのでしたね。私たち。

税理士: 計画通りに業績が順調だから、環境を忘れてしまいましたか?

社長: でも、そういうことってあってもいいですよね。

税理士: 社長の目標は6年後の3,560万ですよ。さあ気を引き締めて5年後に進みましょう。

社長: はい。計算します。

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※返済資金は最終年で端数を調整。<その2>の回を参照。

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税理士: パターンが分かれば経営って楽しくて仕方ないでしょ。いかがですか?さてB/SとP/Lを作りましょう。

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(借入金の端数はこの年(返済最終年)に調整しました)

社長: いや、本当に楽しいですね。無借金になって、キャッシュが3,000万円近く手元にあります。そしてケイマンSは完全に私のものです。

税理士: 正しくは私のものではなく、会社のものですが……

社長: ちょっと口がすべってしまいました。失礼、わかっています。

税理士: さあ、夢の実現まであと一歩です。最終年に突入しましょう。

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税理士: 必要売上高がぐっと下がりましたね。

社長: 返済資金を稼がなくてよくなったからです。この年は楽に過ごせますね。

税理士: ではB/SとP/Lを作成しましょう。

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税理士: おめでとうございます! みごとにフェラーリ購入資金3,560万円をつかまれました!

社長: いやぁ、本当にありがとうございます。夢のようです。うれしいなぁ。涙がでそうです。幸せで一杯です! ご指導に感謝します!

●次回は、税金をくぐらせた後のキャッシュとくぐらせる前のキャッシュの違いについてお話します。


筆者紹介

山下明宏 Akihiro Yamashita
1963年東京都生まれ。税理士。現在、山下明宏税理士事務所 所長。TKC東京都心会所属、2011年より同会会長。「税理士が日本経済の土台を支える」という使命感を持ち、税理士業界の改革と中小企業の支援に没頭する毎日である。とりわけ次世代を担う税理士と経営者の育成には、真摯に取り組んでいる。
http://www.tkcnf.com/yamashita/pc/
http://www.berg-act.co.jp

『テキトー税理士が会社を潰す』 (山下明宏著)

 

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