納税上級者が資産を増やす

(2010/01/24)
今回の相談者
IT企業社長(車好き) (45歳)


無税で最高級車を乗りまわそう <その6>

社長: 夢のような1カ月を過ごしています。私は本当に夢を手にしました。

税理士: フェラーリはもうお手元にとどきましたか?

社長: いいえ、まだです。

税理士: 注文したからって、すぐに来るわけありませんよね。どれくらい待つのですか?

社長: それが……まだ発注していないのです。

税理士: えっ、なぜですか?

社長: 上手く説明できないのですが、いざ資金を手元にしてみると、この現金で買ってよいのか迷ってしまいましてね。

税理士: 迷い? あれだけ欲しかったのに、ですか? 6年間夢見て、やっとつかんだ購入資金ですよ。

社長: そうなのです。自分でも不思議なのです。購入資金が確実に手元で増えていく年々の決算が楽しみでした。よし、計画通りだ、いいぞ、ここまで来たぞ、もう少しだ、頑張れ、あと一歩! というかけ声とともに資金は増えて行き、とうとう目標を達成したのですが、目の前の資金を見ていると、なんだかもう購入してしまったような気になってしまったのです。

税理士: そんなものですか。手にして実際に乗って見なければ、車の満足は得られないと思っていました。かつてのあなたはそうでした。

社長: まったくその通りなのです。先生、私はフェラーリを買うべきでしょうか。

税理士: おかしな質問をされますね。それを目的に私はご支援してきたのですよ。

社長: 確かにフェラーリが欲しい、買いたいです。今でも気持ちは変わりません。しかし先生、私はこの現金を使うべきでしょうか。

税理士: 別の価値観が芽生えたということなのですね。

社長: 「よーく考えよーお金は大事だよー♪」。何かのCMソングが耳元で流れ続けるのです。6年間頑張って積み重ねてきた3500万円をポンと業者に渡してしまうのはどうも踏ん切りがつかない。なにか、この使い方は、間違っているのではないかと思うようになってしまったのです。

税理士: そういうことでしたか。確かにもったいないという考えもありますよね。

社長: 車はローンで買ってもいいですよね。

税理士: 勿論です。すでに学習された通りです。でも金利がかかりますよ。3500万だと年利3%の5年返済でおよそ2,625,000円もかかります。それにまた返済資金を稼がなければならなくなります。

社長: わかっています。しかし、やはりこうした買い物は、貯めたお金ではなく稼いだお金の中から返していくのが正解のような気がするのです。

税理士: 貯めたお金は大切にする。やたらと手から離さないということですね。

社長: 先生、お金には2種類あるような気がするのですが……。

税理士: なんどもシミュレーションを繰り返すうちに段々いろいろなことを感じだしたのですね。はて、2種類とは、どのような種類ですか。

社長: 税金をくぐらせる前のお金と税金をくぐらせた後のお金です。

税理士: くぐらせる……。

社長: 会社の会計で言えば、税引き前に使うお金と税引き後に残ったお金の違いです。

税理士: もう少し詳しく話してください。

社長: 売り上げたお金で仕入れ代金や、その他の経費を支払ったりしますよね。そうしたら、残ったお金に税金がかかって税金を支払った後のお金は、私が自由に使えるお金になるってことですよね。

税理士: 私でなくて会社が、です。すべてが現金取引であった場合、ご理解の通りになります。

社長: 何かを買おうとしたとき、税金を払う前に買うのと払った後のお金で買うのとでは、買える金額が変わりませんか。

税理士: たとえば?

社長: たとえば税引き前の利益=現金が100万円あったとします。このままいけば決算が来て法人税等を40万円支払って60万円残ることになります。

税理士: はい。

社長: 私はこの60万円を好きなように使えるわけですが、60万円のものしか買えません。

税理士: 私でなくて会社が、ですが。

社長: ああ、そうでした。すみません。60万円のものしか買えないなら、決算が来る前に100万円使えば、100万円のものが買えます。この方がお得ですよね。

税理士: 多くの方が、そういう考えに基づいてお金を使ってしまうようですね。そうした行為を、一般に決算対策と呼んでいるようです。

社長: そうですよね。やはり使ってしまった方がお得なんだ。

税理士: しかし、使えばお金はなくなってしまいます。税金を払えば残ります。

社長: お金は無くなりますが、モノに代わります。60万円の現金と100万円の価値があるモノとが、同じ価値かという判断ですよね。私はやはり買ってしまったほうがよいような気がします。60万円の現金が100万円のモノと同じ満足を人に与えるはずがない。

税理士: 税務上の損金になるようなものを100万円お求めになりたいのなら、決算日までにそういうお考えでの買い物は可能です。

社長: この場合、その100万円の内訳はどう考えればよいのですか。

税理士: というと?

社長: 会社のお金100万円を使って100万円のモノを購入するのか、会社のお金60万円と税金40万円を使って100万円のモノを購入することになるのか、ということです。どう考えればよいのですか。

税理士: どっちだっていいじゃないですか。

社長: よくありませんよ。人為的に線引きされた決算という日を過ぎるか過ぎないかで税金がかけられ、100万円あった現金が突然60万円に目減りしてしまうのです。

税理士: 自分のお金だと思うからそういう発想が出てくるのではありませんか。会社は公器とも言いますね。

社長: 公器なら100万円そのものが税金のようなものだということですか。決算日前なら使用可能な税金は100万円、そのうち決算日後は40万円が使用不能な税金になる。そして60万円の使用可能な税金が手元に残る。うーん、わからない。

筆者紹介

山下明宏 Akihiro Yamashita
1963年東京都生まれ。税理士。現在、山下明宏税理士事務所 所長。TKC東京都心会所属、2011年より同会会長。「税理士が日本経済の土台を支える」という使命感を持ち、税理士業界の改革と中小企業の支援に没頭する毎日である。とりわけ次世代を担う税理士と経営者の育成には、真摯に取り組んでいる。
http://www.tkcnf.com/yamashita/pc/
http://www.berg-act.co.jp

『テキトー税理士が会社を潰す』 (山下明宏著)

 

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