(2010/08/24)
今回の相談者
IT企業社長(車好き) (45歳)
無税で最高級車を乗りまわそう <その13>
車好き社長: 前回の経営結果は、他からの借入金を用意できた場合にのみ可能となるシミュレーションでした。こんな経営はやがて破たんします。
税理士: しかし、実際の中小企業経営にあっては、こうした状態にあることが少なくないのではないでしょうか。
車好き社長: そうかもしれませんが、うーん、それでもあのB/Sは辛いです。次の一手どころではない。もう少しなんとかならないものでしょうか。そうだ、減価償却費は、任意に償却することができると聞いていますが……。
税理士: そうですね。しかしそれは税法が言っていることで、会計では任意に償却することを原則は許していません。
車好き社長: この場合、任意と言うのはどういう意味ですか?
税理士: 税法で定められた償却費を償却限度額といいますが、その限度額の範囲内なら、自由に償却してよいという意味です。
車好き社長: 償却費を計上しなかったら、B/S、P/Lはどうなりますか?
税理士: では、次に見て行くことにしましょう。
税理士: この条件は、前回までと同様です。
税理士: P/Lでは減価償却費を計上していません。従ってB/Sの機械は、購入した時の金額のままです。
車好き社長: それでも借入金<2>は出てきますね。
税理士: 利益の中から回収できない場合は、他のどこかから、返済資金を用意してこなければなりませんから、この条件は変わりません。
車好き社長: 借入金の利息分が支払利息に表されますが、その金額分だけ売り上げを稼げれば、減価償却費を計上しないことで、P/L上の当期利益を赤字にしないことができるのですね。
税理士: そうですね。したがって、B/S上の繰越利益も赤になりませんね。
車好き社長: 資産(B/Sの左側)が変化しないのに、負債(B/Sの右側)の金額だけが借入金から借入金<2>へ流れるように移動していきます。他の科目は何も動いていません。
税理士: こうした状態を続けて表示していけば、表面上は債務超過になりません。
車好き社長: 確かに債務超過にはなりませんが、このB/Sには躍動感がまったくありませんね。生きている企業という気がしません。
税理士: そうですね。しかし、こうした表示方法をしてもよいということになっているのです。
車好き社長: そうかもしれませんが、違和感がありますね。
税理士: おっしゃるとおりです。債務超過にしないテクニックを使うことより、事業実態を、はっきりとありのままに示すことが大切だと思います。
車好き社長: これが任意償却を続けた5年後の姿ですか……。
税理士: 全額償却した場合のB/Sと、見比べてみましょう。
税理士: どちらのB/Sになろうとも、経営の実態は同じです。
車好き社長: 同じ経営実態でも、表記はこんなに変わるのですか……財務諸表を何年見ても、何一つわかるようにならない理由の一端を、少しだけ知ることができました。
税理士: さて、この企業は、今後どうしていくべきでしょうか。経営を続けるか、諦めるか…、社長ならどちらを判断されますか?
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山下明宏 Akihiro Yamashita


