(2009/08/24)
今回の相談者IT企業社長(車好き) (45歳)
無税で最高級車を乗りまわそう <その1>
社長: えっ? “無税で車に乗る”? そんなことが可能なんですか?
税理士: そんな虫のいい話があったら、私も教えてほしいですね(笑)しかし、そのような視点で財産を管理していく姿勢は、これからますます重要になっていくと思います。現代社会といえば、経済は縮小していく一方で、子どもの数は減り、人口に占める老人の割合こそ増えるばかりです。そのうえ社会保障費は年々嵩んでいくのですから、当然、税金は重くなっていくでしょう。これからの時代、税金と上手に付き合っていかないと、もはや資産は残せないのではないでしょうか?
社長: なるほど。“税金と上手に付き合う”ですか……では、どんなふうに上手に付き合っていけばよいでしょうか?
社長: なるほど。“税金と上手に付き合う”ですか……では、どんなふうに上手に付き合っていけばよいでしょうか?
税理士: まぁ、そう焦らずに。税金と上手に付き合う方法を身につけることはとても大切ですが、その前に、まずは「資金計画」を立てる習慣をつけることが重要です。「経営」という視点から見れば、税金も資金計画の一部ですからね。
社長: 資金計画……。
税理士: では、早速始めますよ。あなたが会社を設立した当時のことを思い出してみましょう。資本金は1000万円でしたね。そうすると、設立時に税務署に提出した最初のB/S(貸借対照表)は……

↑上記内容でしたね。
社長: そうでした。懐かしいなぁ。
税理士: 実際は事業活動とともに、様々な支出などが発生して、B/S(貸借対照表)、P/L(損益計算書)は複雑になっていきますが、今回はシンプルに、車を1台買うことにしましょう。1000万円以内で買える車で社長がお好きな車はなんですか?
社長: うーん、何にしようかな? いきなりそう言われると迷っちゃいますね(笑)「ポルシェ・ケイマンS」なんかいいですね。
税理士: それは、おいくらですか?
社長: 車両本体価格は、6速830万円と7速PDKで877万円の2タイプがあります。私は「7速」を購入したいです。
税理士: わかりました。それでは、購入時にかかる保険料、税金、登録諸費用、リサイクル料金、付属品などの価格は、ここでは無視して話を進めます。877万円の車両を購入したときのB/Sは……。

と、変化しますね。
社長: はい、わかります。
税理士: さあ、ここであなたは計画を立てるのです。
社長: 計画?
税理士: 好きな車に乗りながら、購入代金を回収する計画をたてましょう。車の法定耐用年数は6年です。それでは、6年間かけて購入代金を回収することにしましょう。
877万円÷6年=146万円。つまり、年間に146万円を稼ぐということで、この金額をベースにします(端数は最終年で調整)。それに、ガソリン代、保険料、駐車料金、洗車代、自動車税、修繕費、車検代などの維持費を足した金額を加味します。仮に維持費が年間240万円かかるとしましょう。車に乗るために必要な収入は146万円+240万円=386万円(最終年に387万円)になります。
社長: 改めて考えると、車両代より維持費のほうが高いんですね。
税理士: そうでしょうか? あくまでこれは概算ですからね。しかし、「そうした諸々の諸費用があって、維持費はこれくらいかかりますよ」といったアドバイスがあったら、「こんな高い買い物はしなかったのに」と、税理士にこぼされる経営者は少なくありませんね。
さて、車両の減価償却費をみてみましょう。定率法で計算すると、6年間でこんなふうに推移します。

以上の条件から、6年分のB/SとP/Lを作成してみましょう。購入時からちょうど1年後に決算が来たことにします。

税理士: 売上高386万円から240万円の維持費が使われ、さらに減価償却費366万円を差し引くと、初年度の利益は△(マイナス)220万円の赤字になります。
社長: 資金回収をするのに「赤字」でいいのですか?
税理士: B/Sの現金を見てください。購入時は123万円でしたか、269万円に増えていますよ。
社長: 本当だ。146万円増えている。
税理士: ねっ! 計画通りでしょう。そして、2年後……

社長: 現金がまた146万円増えました。ところで、「繰越利益」と「当期利益」の違いを教えてください。
税理士: 当期利益は、その年“1年間”の利益を表します。繰越利益は、その企業が誕生してから現時点までの累積の利益が表示されます。
社長: 繰越利益は1年後の決算では△220万円でしたが、2年後は当期利益△67万円なので、加算されて△287万円になるのですね。
税理士: その通りです。さぁ、3年後を見てみましょう。

社長: 初めて当期利益が黒字になりました
税理士: しかし、たった22万円の利益ですから、繰越利益は△(マイナス)のままです。
社長: 赤字なのに現金が年々増えていくってなんだか不思議です。おもしろいですね。
税理士: 「減価償却費」という資金の流出を伴わない経費のおかげです。4年後は、こうなります。

社長: 減価償却費がかなり小さくなりましたね。そして、売上が一定なので利益も上がり始めました。
税理士: でも繰越利益が△(マイナス)なので、法人税などは発生しません。5年後は、以下の通りです。

社長: 資金計画に裏打ちされた利益だから、安心して計上できますね。
税理士: 一般に言われている利益計画が、絵に描いた餅になってしまうケースのほとんどの原因は、資金計画を土台にしないからだそうです。
社長: 年々変化するB/S、P/Lをもとに、その推移を見ていくと、計画の重要性を改めて感じさせられますね。さぁ、ついに6年後です。

社長: うわぁ! 本当に現金がキッチリ戻ってきました!
税理士: きちんとした資金計画をたてれば、車に乗りながらでも購入代金を回収できるんです。そのうえ、帳簿上では0円になってしまいましたが、実際は車はあなたの手元にあるんですから。
社長: なんだか得した気分ですね。財産が増えたという実感が持てます。
税理士: つまり、あなたは税金を考える必要なく、資産を増やすことに成功したわけです(※法人住民税の均等割り――たとえば、資本金1000万円以下なら7万円――を考慮していません)。この時点で今の車を売却して、新車を購入するもよし、新車を追加して2台の車を所持するもよし。理想的な資金サイクルをいかせば、あなたも税負担なく、好きな車を乗り続けることができるのです。
社長: すばらしい! 夢が現実になる日も近いというわけですね。 ありがとうございます!
●次回は、「無税で最高級車を乗りまわそう <その2>」として、「車両購入資金」「借入金」「社長ポケットマネー」と上手に付き合い、明るい会社経営を目指す指南法をご紹介します。

山下明宏 Akihiro Yamashita


