(2009/09/24)
今回の相談者IT企業社長(車好き) (45歳)
無税で最高級車を乗りまわそう <その2>
社長: 前回のお話を通じて「税金」の心配なく、“高級車”という資産を増やす術を知ることができました。なんだか、本当にワクワクするお話でした! ありがとうございます!
そこで、たとえば「借り入れ」をして車を購入した場合にはどうなるのか教えてください。
税理士: 借り入れた場合は、会計処理と資金繰りが多少複雑になります。
社長: 購入資金を借りるだけなのに、資金繰りまでが複雑になるとはどういうことですか?
税理士: それでは今回は、“お金がない経営者”が高級車を購入する場合の「B/S」「P/L」を考えてみましょう。
資本金1万円で会社を設立した経営者が、前回と同じ車を全額借り入れで購入します。借入期間は5年間、金利は3%で、支払利息の総額は66万円とします。1年後に22万円 2年後に18万円 3年後に13万円 4年後に9万円 5年後に4万円支払うことにします。金利分を稼ぐために売上を年間11万円あげて、397万円(最終年に398万円)にします。借入金の元金は、877万円÷5年で、年間175万円(最終年に177万円)返済します。

つまり、以下のようになります。


社長: 現金で高級車を購入したときは、現預金と車両の合計が資本金とバランスしていましたが(連載第2回参照)、今回は、現預金と資本金、借入金と資本金がそれぞれバランスしていますね。1つのB/Sの中で、2種類のB/Sが1つのB/Sに納まっているという感じです。
税理士: おもしろい表現ですね。ここまではかなりわかりやすいですが、さぁ一年後に進みましょう。一気にややこしくなりますよ。

社長: ひゃー! 本当にたくさん科目が出てきました。このB/Sはさっきみたいに美しくはありませんね。
税理士: とはいえ、P/Lは支払利息の科目が増えただけですよ。
社長: 支払利息の分だけ売り上げが上がっているかと思っていましたが、当期利益の金額も無借金のときと変わるのですね。
税理士: 支払利息が年々変動するからです。それに対し、必要売上高は6年間の必要売上高の平均を予算にしたわけですからですね。
社長: ところで、表内の「借入金<2>」ってなんですか?
税理士: 銀行への返済金額が足りなくて、新たに捻出しなければならなくなった「無利息」のお金のことです。計画では、6年間で購入資金を回収するわけですが、借入金の返済は5年間の約束です。銀行への返済期間が、売上による資金回収より1年早いために、別途資金を調達しなければならなくなるのです。
社長: “別途”って、どこから調達するのですか?
税理士: それを考えるのが経営者でしょう。もっとも多いケースは社長のポケットマネーからの捻出でしょうか。
社長: “持ち出し”ですか……うーん、ちょっとまだ、なぜ“持ち出し”が必要なのかわかりません。
税理士: つまり、年間売上高は397万円です。ということは、資金があなたの手元にそれだけ入ってくるということですね。
社長: はい。
税理士: では、費用の方を考えてみましょう。費用には2種類あります。“資金の流出を伴う費用”と“伴わない費用”でしたね。分類できますか?
社長: 資金の流出を伴う費用は、「維持費」と「支払利息」です。伴わない費用は「減価償却費」です。
税理士: その通りです。1年後のP/Lでは、維持費が240万円、支払利息が22万円、合わせて262万円の資金が流出します。収入との差額は135万円です。これが、手元に残るお金です。しかし、この135万円は利益になりません。
社長: 資金の流出を伴わない費用、減価償却費に吸収されるからですね。
税理士: すばらしい! 名答です。この年の減価償却費は366万円です。135万円はその範囲の中にありますから、まるまる手元に残ります。この135万円が借入金の返済に回るわけです。ところが、銀行との約束は年間175万円の返済です。ここに差額が40万円生まれてしまいます。
社長: なるほど、資金不足になってしまいましたね。
税理士: おわかりいただけましたか? さあ、二年後に進みましょう。

社長: あのーぉ、借入金<2>が増えているんですけど……。
税理士: そうですね。新たに36万円の資金不足になりました。
社長: 理屈はわかったのですが、心情的には納得できないです。
税理士: お気持ちはわかります。さぁ、3年後はどうでしょう?

社長: えっ? またまた借入金<2>が増えています。
税理士: 年々の資金不足、つらそうですね。この年は31万円の資金不足です。
社長: お金が足りない。どこからか用立てなければならないという宿題が、頭から離れない3年間です。
税理士: ご苦労様です。さて4年後はどうでしょう?

社長: 3年後から利益が出始めてきたのに、この年もまだ借入金<2>は増えていくんですね。
税理士: はい。不思議に思えるでしょうが、その通りです。それでも、借入金全体の残額は減っていってますよ。
社長: あぁ、確かに減っていますね。しかし、調達のことが頭から離れなくて残高が減っているという実感はわきません。2年間利益は計上できるようになりましたから、来年はお金集めから解放されますよね?
税理士: では、5年後に進みましょう。

社長: そんなバカな……銀行借入の返済がようやく終わりましたが、借入金<2>は、この年も増えていますよ。
税理士: つまり、5年間にわたって総額158万円を、別途調達してこなければならなかったということです。
社長: まさか、来年も調達しなければならないのでしょうか?
税理士: 金融機関への返済はもう終わりましたからね。では、6年後に進みましょう!

社長: あっ! 借入金<2>がキレイにゼロになりました。
税理士: 最終年でようやく返済原資が回収されたわけですね。よく頑張りました。おめでとうございます。全額借り入れで見事に「無税」で車を手に入れることができました。いかがでしたか?
社長: 無税はうれしいのですが、なんだかしんどい6年間でした。シミュレーションなのに、どっぷり疲れてしまいました。
借り入れしたために、金利分だけ余計に稼がなければならなくなるし、ポケットマネーを用意しなければならないし……。返済が終わったとき、会社の金庫には、設立当初の“はじめの1万円”しかないし。いや、というより6年間ずっとお金がないままでしたね。
税理士: でも車は残りましたよ。
社長: ええ、確かに。でもなんだかとってもポンコツな1台が残っているって感じがします。無借金で買ったときと、まるで違った「ケイマンS」にみえます。
税理士: 物理的にはまったく同じ車なんですけどね。会社運営の仕方で、同じ物も違って見えてくる。興味深いですね。
社長: お金が手元にあるということが、いかに大切かわかりました。
税理士: あなた自身の精神面を整えながら、無理のない会社経営を心がけると、周りの景色はいつも美しく見えて、その結果、ますます財産が増えていく。そんなウレシイ感覚を、おわかりいただけましたか?
社長: はい、よーくわかりましたm(_ _)m
●次回は、「無税で最高級車を乗りまわそう <その3>」として、資金の上手な調達法と会計処理の関係性をご紹介します。

山下明宏 Akihiro Yamashita


