(2009/11/24)
今回の相談者IT企業社長(車好き) (45歳)
無税で最高級車を乗りまわそう <その4>
社長: 前回は、寝かせてしまった資金を「資金量」として換算するという新たな視点を教えていただきました。少しばかり金利を安くしようとして無駄なお金の使い方をしてしまうところでした。
税理士: 資金量をいかに小さくするかをポイントに計画を立てることは重要ですね。
社長: 手元のお金を大切に使うという言葉に置き換えて理解してよいですか?
税理士: いい表現ですね。
社長: ということは、返済資金は、極力商いの中から捻出することになりますよね。
税理士: これまでの計画はすべてそうでしたよ。
社長: ああそうでした。えっ? じゃあどういうことなんですか?
税理士: 少し意地悪な言い方をしました。すみません。そうなんです。商いの中から捻出するのですが、今回は、借入金の返済期間内に捻出することにします。これまでは減価償却費の償却期間で捻出していました。
社長: 借入金の返済期間内に必要資金を稼ぎだす。なんか面白そうです。寝ている体を起こすという感じですね。
税理士: その他の条件は第3回と同様です(借入金の端数は、返済最終年の五年後に調整)。さあ1年後に進みましょう。
税理士: 年間の返済資金は175万円でした。減価償却期間の6年間を通して購入資金を調達するために必要な売上高は年間397万円でした。しかしそのためには、40万円の追加資金を別途用意しなければなりませんでした。ですから40万円売上を上げることができれば、返済資金を商いの中から用意することができます。※詳しくは第3回を参照してください
社長: 必要売上高というのは、根拠のある売上のことなのですね。商売にやる気がついていくという感じですね。
税理士: さあ、2年後に進みましょう。
社長: B/Sが実にシンプルです
税理士: センスがいいですね。見た目に美しいB/Sを作ろうと心がけることは、経営していく上で重要な視点です。このB/Sが美しく見えるのは、商いの中から返済資金を捻出しているからですね。2年後の必要売上高を計算してみてください。
社長: 返済資金175万円を作ればよいわけですよね。それにお金がでていく費用を足します。
税理士: その通りです。結果的に利益は△38万円になりますが、赤字でも資金を捻出できるので、この時点では、赤字であることを特に意識しなくてもよいですね。社長: 返済資金を調達したので、許容される赤字の限界点だと理解すればよいですか?
税理士: その通りです。では3年後に進みましょう。
社長: 必要売上高を試算します。
税理士: 積極的になってきましたね。社長: 年々必要売上高が変化するって、リアリティを感じて面白いです。
税理士: 成長していますね。
社長: ありがとうございます。でもこの計算では利益が出てしまいますね。
税理士: よく気付かれました。しかし繰越利益がマイナスなので、利益はその中に吸収されてしまいます。
社長: 過去の損失を取り戻したわけですね。
税理士: はい。では4年後に進みましょう。
社長: この年の必要売上高は424万円です。
税理士: 暗算ですか。
社長: もうバッチリです!
税理士: 頼もしい。では5年後に進みましょう。
税理士: この年の返済額は177万円として必要売上高を計算してください。社長: こうですね。
税理士: 会計だけの条件で作成するB/S・P/Lなら今まで通りの処理で、今回もそれに従えば上図のようになります。しかし、よくB/S・P/Lを見比べてみてください。
社長: ……?
税理士: 当期利益と繰越利益の関係です。
社長: 当期利益が黒、繰越利益も黒……
税理士: そうですね。わかりやすいように、1年後から表にまとめてみましょう。
社長: 5年後から、B/S上もP/L上も両方とも黒字なったということは、本当の利益体質の企業になったということですね。
税理士: そうですね。本当の利益体質の企業になると、P/Lの表示が変わり、必要売上高も変わります。
社長: 税引前当期利益に、法人税等……今までにいない表示がでてきました。売上高は455万円になっている……
税理士: そうですね。法人税等を計算する前に、税引き前の利益を集計します。これが税引前当期利益です。税引前当期利益から法人税等を差し引いて当期利益を求めます。法人税等を考慮して必要売上高を計算します。
社長: 法人税等って……利益の約40%だと聞いていますが、なぜ34万円でよいのですか?
税理士: 青色申告している法人は7年間赤字(欠損金)を残す(繰り越す)ことができます。4年後のB/Sでは、繰越利益が△75万円でした。この金額を税金の計算上、税引き前の当期利益から差し引いて計算してよいということになっています。
そこで計算式はこうなります。
5年後の場合は、税引き前の利益に直接税率をかけなくてよい理由がおわかりいただけましたか?社長: わかりました。しかし、税金を支払うために売上高は34万円ほど上げなければならなくなるのですね。税金のために、はじめて働いた年になりました。しかし返済資金を別途に調達しないためには、絶対に税金を払わなければならなくなるということもわかりました。
税理士: 鋭いですね。そうなのです。金融機関への返済期間と減価償却費の償却年数を比較した場合、ほとんどのケースで、減価償却費の償却年数のほうが長いので、年々計上する減価償却費の中から返済資金を捻出することができなくなり、結果として利益の中から返済資金を捻出しようとすると、税金を支払うことになるのです。
社長: 税をとる仕組みづくりのために減価償却費の償却年数は定められているのですね。
税理士: そういう見方もできますね。さて、返済のなくなった6年後はどうなるのでしょうか?
社長: 2つのパターンで計画が立てられるのですか?
税理士: これまでのルールの通り計画するなら、繰越利益を0万円にしますから、Bになります。当期利益を0万円するならAになります。返済の約束がなくなりましたから、実際はお好きなように計画していただける年です。その中から2つのパターンをご紹介しました。
社長: お好きなようにと言いましても必要売上高はあるのですよね。
税理士: そうです。お金が出ていく分は稼がなければなりません。この年は維持費の240万円だけが必要です。
社長: それだけ稼げば赤字でも構わないわけですね。
税理士: さらにBのケースでは5年後に納めた法人税等のうち、国税分を取り戻すこともできます。
社長: それはますますお得ですね。私はBを選択します。たった240万円の売上げだけでいい1年。気楽な年です。
税理士: 経営していく上で、たまに訪れるつかの間の休息でしょうか。こうした事業年度にじっくり次の計画を練りたいものですね。
社長: 計画的に経営していけば、税金は最小限の範囲でしかも納得して払えるようになるだけなく、休んだり、考えたりする時間も生み出せるようになるのですね。
税理士: そのために、国が減価償却費の償却期間を設定してくれたとも言えますね。
社長: そうは思えませんが……。
税理士: (笑)
●次回は、車好き社長がたくましく経営していく姿をご覧いただきます。

山下明宏 Akihiro Yamashita


