男の週末トリップ

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DAY 3

×月×日(日)
8:00 朝食後、ホテルをチェックアウト。
レンタカーを借りるべくホテル近くのバジェットレンタカーへ。予約なしでOKだろうとタカをくくっていると、何と土曜日は休み。今日はこの後、バンクーバー島を南へ約200キロメートル下ったナナイモへ移動、そこから水上飛行機でバンクーバーへ向かう予定だ。車がないと非常にまずい。調べた結果、10キロメートルほど離れたところにもう一軒、バジェットがあることが判明。すぐに電話で予約し、迎えに来てもらう。当たり前だが、やはり予約は必要だ。乗り捨てするなら尚更だ。

9:30 クインサム川で鮭の遡上に遭遇。
ホテル近くのインフォメーションセンターでキャンベル・リバー周辺の見所について尋ねる。すると今ならクインサム川で鮭の遡上が見られるとのこと。早速、細い山道を、地図を頼りに進む。しばらく走ると「クインサム・ハッチェリー」という鮭の孵化場に到着する。車を止め、その脇にある川に近づく。川一杯に大きな鮭が群れをなしている。近づいても全く逃げる様子がなく、自らの使命を達成するために一心不乱に上流を目指している。まさにテレビで見たことがあるアノ光景だ。しかし残念ながらそれらの鮭達はこれ以上先に進めない。人工の魚道が作られており、自動的に孵化場の入口へ「ご案内」される仕組みになっているのだ。そして強制的に採卵される。目の前の川には確実に手づかみできる大量の鮭。めちゃくちゃいるじゃないか。なぜ2匹しか釣れなかったのか。封印したはずの苦い記憶が再び蘇る。

12:20 ナナイモへ向け出発。
フリーウェイを南へ走る。広大な空と深い森、大自然を貫く19号線は車影もまばら。吸い込まれるようにアクセルが沈む。気がつけばとんでもないスピード。いかんいかん。

13:45 マクミラン州立公園に立寄り。
ナナイモへの道中、19号線から一旦4号線に入りポート・アルバーニ方面へ向かう。しばらく走ると辺りの景色は一変、鬱蒼とした黒い森が続く。マクミラン州立公園は太古の時代を彷彿させる巨木が林立、精霊たちが肉眼で見えそうな不思議な空間。深く息をつき、ただそこに佇む。時間の感覚が狂う。

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14:50 風光明媚な港町、ナナイモ到着。
ガソリンを入れ、レンタカーを返却する。レンタカー会社では頭がおかしくなってしまったかのような格好の女性スタッフが笑顔でお出迎え。かなりテンションは高い。尋ねたところ今日はハロウィーンで朝から仮装して仕事をしているらしい。高まる気持ちを抑えきれない祭りの当日。岸和田のだんじり祭りと同じだ。

15:30 水上飛行機 チェックイン。
ナナイモから対岸のバンクーバーへはジョージア海峡を隔てて西へ約60キロメートル。今回は生まれてはじめての水上飛行機のフライト。ハーバーにある事務所でチェックインを済ませ、飛行機まで桟橋を歩く。機材は13人乗りのデハビランド社製。片側1席ずつにもかかわらず13人乗り。その秘密は、何と機長の横の席も客席として開放しているのだ。ちなみに手荷物検査などセキュリティーチェックは一切なし。もはや飛行機の扱いではない。機長の横には喜々とした表情の少年が陣取る。とても羨ましい。

16:35 バンクーバー・ハーバー到着。
ナナイモからは約20分のフライト。バンクーバーの街中の港に到着するのでとても便利だ。初めての水上飛行機、水しぶきを上げながらの離着水は車輪よりも静かでスムーズ。単なる移動ではなく、ジョージア海峡に広がる大自然をも満喫できる。とてもお値打ちだ。日本円で7,000円ほど。

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17:00 シェラトン・ウオールセンター チェックイン。
港からタクシーで約10分。ホテルへ到着。明日の午前中のフライトで帰国のためバンクーバー滞在は今夜のみ。ハロウィーンでも楽しみながら一杯ひっかけようという塩梅だ。

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18:00 市内中心、グランビル通りを散策。
日中はそれほどでもないが、この時間になると街は完全に仮装大会状態。魔女やお化けのトラディショナルなモチーフはむしろ少なく、素人目にも明らかに趣旨を逸脱しているものが多い。中には「それはあかんやろ」的なものも散見されるが今日だけは大目に見てもらえるようだ。歩行者天国のグランビル通りを南へ歩く。時間の経過とともに街はカオスと化し、ゲテモノ達に支配される。

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19:00 バンクーバーの悲劇。
グランビル通りからR&Bを聴かせてくれるライブハウスへ向かう途中、ウェストポーチのファスナーがあいていることに気づく。閉めたはずだがなぜか開いている。念のため中を確認する。パスポートが見当たらない。何度探しても見当たらない。全身から血の気が引く。とりあえず来た道を引き返しながら探すも、すぐにバケモノたちの洪水に飲みこまれる。もはやどうにもならない。「明日帰れないかもしれない……」最悪の事態が脳裏をよぎる。

20:20 バンクーバー警察へ事故届を提出。
タクシーでバンクーバー警察へ。しかし予想外の展開。クローズしているのだ。日本の警察のように24時間オープンしていない。通用口にある「緊急用」インターホンで事情を説明する。しかしお前のそれは「緊急ではない。明日来い」と一蹴される。らちが明かないので近くにいたポリスマンを捕まえて事情を話すと、何とその場で届出を受けつけてくれた。事故証明として小さなカードを一枚くれた。

21:10 ホテルへ戻り対応を検討する。
土曜日の夜、街はハロウィーン一色。お祭り騒ぎのハイテンションの中、どん底まで気分が沈む。これほど鮮やかな天国と地獄は見たことがない。ホテルの部屋であぐらをかき腕組みをするが全く何もひらめかない。とりあえずAMEXのデスクへ電話をしてみる。いろいろ親身になってくれる。そしてトロントの日本大使館に問合せをしてくれ、初動のイロハを聞いてくれた。そして夜間緊急用の電話番号を教えてくれる。すぐさま大使館に電話で相談する。帰国を急ぐのであれば「帰国のための渡航書」という一回限りのワンタイム・パスの発給を勧められる。書類さえ揃えば即日発行してくれるようだ。必要書類は(1)戸籍謄本(2)本人確認資料(3)事故届(4)再手配した航空券(5)45mm×35mmの写真2枚とのこと。ただしバンクーバーの領事館は土日は休み。月曜日以降にそれらを持参するようにアドバイスを受ける。今日はこれ以上どうしようもない。明日帰国できないことが確定した。

22:30 ソウルバーでやけ酒をあおる。
ホテル近くにバンクーバー唯一のソウルバーを発見する。70-80年代を中心に90年代のニュージャック系もしっかりカバー。ターンテーブルではなくipodでのコンピレーションだが選曲はシブイ。カウンターで一人、負のオーラを発しながらビールをあおる。泥酔したバケモノ達が「オイ、ゴルァ、そこのオッサン。テンション低いなあ」と絡んでくる。今日は気分がすぐれない旨を伝えると「ワシが元気にしてやる」とテキーラをショットグラスでごちそうしてくれる。ありがたく頂き、一気に飲み干す。掻きむしられるように胸が熱くなる。やぶれかぶれで本当にバケモノと化した連中と朝まで飲む。

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DAY 4

×月×日(日)
8:00 起床。
とりあえず今日できることを粛々とこなす。ホテルの延泊手続きに航空券の再手配、「帰国のための渡航書」用の写真撮影、日本から戸籍謄本のFAX、当座の着替えの調達など。戸籍謄本は幸いにも自宅にストックがあった。午後、念のため警察を訪れる。万が一にも届いているかもしれない。しかし当然あるわけもない。夜、昨晩に続きホテル近くのソウルバーを訪れる。見事に誰もいない。祭りの後の静けさのなか一人ビールを飲む。ヴァンパイアに扮していた東欧出身の女性スタッフも今日は普通の装い。他愛のない話でおよそ2時間。日付が変わる頃ホテルへ戻る。



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DAY 5

×月×日(月)
8:45 日本領事館inバンクーバー。
必要書類をそろえ、人気のない領事館のオープンに並ぶ。胸が高鳴る。パチンコ屋の新築開店に並んで以来の高揚感だ。内部のスタッフが気を遣って少し早めに通してくれる。事情を説明し申請手続きを行う。30分後。特に問題もなく「帰国のための渡航書」が無事発給される。これで明日帰国できる。祖国の土を踏めることをこれほど嬉しく感じたのは初めてだ。一段落着いたところでシネコンへ向かう。マイケルジャクソン「This is it」を鑑賞。やはり「Off the Wall」の頃のマイケルが一番カッコいいことを再確認する。夜、三夜連続で例のソウルバーへ向かう。一組だけ先客がいる。全体的にハロウィーンの後遺症で夜は静かだ。スタッフに、今日は何かいいことがあったかと訊かれる。「あした国へ帰れることになった」と答える。不思議なやりとりに、異次元へタイムトリップしたかのような錯覚に陥る。2時間ほど飲んでバーを後にする。



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DAY 6

×月×日(火)
9:00 ホテルチェックアウト。
タクシーで空港へ向かう。2日遅れの帰国。むしろ2日で済んだと前向きにとらえる。ボーダーレスが進む社会。しかし国境には厳然とボーダーは存在する。緊張感が緩んでいたことは否めない。週末トリップどころかガッツリ5泊7日の普通の旅行になってしまった。大いに反省の旅だった。

11:30 JL17便成田国際空港行出発。


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DAY 7

×月×日(水)
14:35 成田空港到着。
こそこそと出社。


●次回は「オーストラリア」での濃密旅行をおとどけします。
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