男の週末トリップ

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(2010/07/24)

DAY 2

×月×日(金)
05:30 起床

06:15 ホテルチェックアウト
あまりにも朝が清々しい。少し距離はあるが、空港までの列車が走るテルミニ駅まで歩く。始まったばかりのローマの朝は観光客も少なく、この時ばかりはテーマパーク色が一切消える。街が「永遠の都」としての素顔を取り戻す。駅まで約20分。






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07:20 レオナル エキスプレス
テルミニ駅でチケットを買い、空港線のホームへ歩く。これがまた遠い。メインターミナルの端からさらに数百メートル離れており、まるで山手線の渋谷駅から埼京線の渋谷駅へ乗り換える感覚。同じ駅だと思っていたらえらい目にあう。時間がない時は注意が必要。チケットに刻印をして列車に乗り込む。改札はセルフサービスだ。
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07:53 ローマ・フィウミチーノ国際空港到着
アリタリア航空874便カサブランカ行チェックイン。カウンターの女性が何やら大きな勘違いをしており、一瞬「あなたの乗る飛行機はない」とバッサリ切られる。そんなはずはないと粘り強く交渉をしていると女性が突然大きな声で笑い出し、「1日間違ってたわ、チャオ」でおわり。頼むでしかし。

09:20 アリタリア航空874便カサブランカ行出発
ターミナルが見えないくらい、遥か彼方の沖止めスポットから出発。朝から飲まず食わずのためシンプルな機内食も干天の慈雨だ。

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11:25 カサブランカ・ムハンマド5世国際空港到着(日本との時差?8時間)
ローマから約3時間。滑走路脇に咲き誇るケシの花が風に揺れ、モロッコ到着を歓迎してくれる。いよいよアフリカ大陸上陸だ。


11:40 モロッコ入国
薄暗いターミナルを抜け、イミグレへ。ビザも必要なくスムーズな入国。到着ロビーで現地通貨「ディルハム」をキャッシング。空港と直結した駅へ向かう。ここから列車でカサブランカ市内へ移動する。
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12:00 カサ・ヴォワジャー行き列車出発
空港からカサブランカの玄関口、カサ・ヴォワジャー駅までの列車は1時間に1本。今回12:00出発の列車にギリギリ間に合う。というかアフリカで定刻キッチリの出発に逆に感心する。シートに足を伸ばし、車内販売の濃厚なエスプレッソで一息つく。車窓は荒涼とした原野から徐々に雑然とした街並みに変化する。市内までは約30分。
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12:30 カサ・ヴォワジャー駅到着
ここからメディナ方面へ、タクシーを使わず歩いてみる。ムハンマド5世通りからヤシール広場を左に曲がり、中央市場へ向かう。この辺りはフランス統治時代の影響を色濃く残した建築物が数多く残るエリア。アールデコとイスラムの建築様式が融合した美しい街並みは独特の雰囲気。気温は30度を超えている。そろそろ限界だ。

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13:30 マルシェ・セントラル(中央市場)到着
カサブランカ最大の市場。しかし昼を過ぎているせいもあり人影はまばら。店も半分以上閉まっており閑散としている。そんな中、やたらテンションの高い魚屋のオヤジに捕まる。日本から来たと分かると「アイラブニンジャ」とさらにボルテージが上がる。そして自身の魚屋の中の「お立ち台」のようなところに招き入れられる。やたら写真を撮れとうるさい。このあたりはトルコ人そっくりだ。
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13:45 シーフードレストランで昼食
マルシェ近くのレストランで昼食。市場が近いこともありこの辺りにはシーフードレストランが多い。適当に店を選びオープンテラスにつく。メニューはフランス語しかなく言葉も通じない。とにかく「シーフードプラッター、カモン」を連呼する。わかったのかわかっていないのか不明だが暫くすると、見事なシーフードの盛り合わせが出てくる。エビや白身魚、ムール貝に舌平目、食べきれないほどの新鮮な海の幸は、漁港が近いこともありどれもうまい。付け合わせのオリーブも色鮮やかで美しい。暑さで半分やられていたが、すっかり元気を回復する。

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15:00 メディナを散策
マルシェから歩いて15分ほど、高い壁で囲まれたエクスクルーシブな一角に到着する。メディナとは旧市街のことで、街の周囲を外敵から守るため高い壁で囲み、内部も不整形でまるで迷路のような造りになっている。カサブランカはモロッコ最大の商業都市だが、100年以上前につくられたこのメディナの中だけは、どうにもこうにも仕様がなく、タイムスリップしたような昔ながらの建物と庶民の生活が残る。


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16:00 ついに事件に巻き込まれる
メディナの南の方は主にスーク(市場)になっており、大勢の人で賑わっている。しかし北の方は細い路地が入り組む住宅街となっており、地元の人間以外はほぼ確実に道に迷う。そんなところへ入り込み、ご多分に漏れず方向を見失っていると、一人の青年が話しかけてくる。そしてなぜか細い道の方へ誘導しようとする。この時点で何となく怪しさを感じたため、とりあえず来た道を引き返すべく振り向いた瞬間、「ケツ」に衝撃が走る。何事かと後ろを向くと、先ほどの青年が手に何かを握りしめ猛ダッシュで逃げて行く。年のせいか状況を理解するのに数秒かかったが、ジーンズの後ろポケットに入れていたカメラをひったくられたことがわかった。



相手はすばしっこい青年、こちらは重いバックパックを背負った運動不足で腰痛持ちのオッサン。どう考えても勝てない試合だ。しかし、なぜかここで大和魂に火がついてしまう。日出づる国の男子としての眠れるDNAが呼び起こされてしまったのだ。こんなところで尻尾を巻いてスゴスゴと引き下がるわけにはいかない。そして鉄のように重いバックパックを地面に叩きつけ雄叫びを上げる。


「シャーッ、ゴルァー、またんかいっ!コノクソガキャー!」


青年はすでに先を行き、さらに細く入り組んだ道をウサギのように逃げる。その後をアキレス腱が切れたらどうしようと心配しながら必死に追う。しかし数秒後、空回りした足はもつれ、石畳にダイブするように激しく転んでしまう。思うように動かない体にジレンマを覚える。歯を食いしばりながら前方の青年を睨みつける。



そして青年が路地沿いにある一軒の白い家の中に吸い込まれる姿を見逃さなかった。



ゆっくりと立ち上がり、その家へ向かう。右足の半月板を強打したらしく激痛が走る。薄暗い門をくぐるとすぐに細い階段があった。迷わず昇る。一歩一歩ゆっくりと昇る。そして踊り場を曲がりさらに上へ。するとそこは行き止まりになっており、なんと先ほどの青年が太い角材を振り上げこちらを向いて構えている。ここで会ったが100年目。絶対に逃がさない。全身の力を振り絞り再び雄叫びを上げる。



「シャーッ、ゴルァー、わしのグァメラがえさんがいっ!このクソガキャーッ!」


すると青年が何か叫びながら振り上げた角材を思いっきり投げつけてきた。咄嗟に右によける。角材が顔面の左側を通過し、思いっきり後ろの壁に当たる。間一髪セーフ。そしてゆっくり立ち上がり青年に近づく。取っ組み合いでは恐らく負けるので、寝技に持ち込み耳を噛み千切る戦略を立てる。お互い手の届くところまで近づく。不思議と恐怖は感じない。すると般若のような形相で立ち向かうアジアのオッサンに観念したのか、青年がサッとカメラを差し出してくる。手が震えている。思いっきり睨みつけて奪い返す。微妙な空気が流れ、青年がスゴスゴと階段を降りて行く。許すわけがない。すれ違いざまに背後から思いっきり大きな声で「シャーッ、グルァッー」と渾身の力で叫び声を浴びせる。すると青年は相当驚いた様子で、先ほどの角材を拾い、再び上に向けて思いっきり投げつけてきた。幸い手前で着地し直撃は免れる。青年が去った後、その場にへたり込んでしまい動けない。完全に腰が抜けてしまった。

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16:20 メディナのカフェでミントティー
来た道をゆっくりと戻り、スーク内のカフェでミントティーをすする。先ほどの出来事を振り返る。なぜ、デジカメ一つのために無謀にも丸腰で敵陣へ乗り込んでいったのか。なぜ、若い頃にはなかった勇気がオッサンになってから湧いてきたのか。戦場で戦う時の心理もこんな感じなのか。タコのように弛緩した体をかろうじてイスにひっかけて考える。結論は出ないが、もはや週末トリップの趣旨を大きく逸脱していることだけは確かだ。

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17:50 アインディアブ方面へ向かう
二度と来ないと心に決めたカサブランカのメディナから、相乗りのプチタクシーでアインディアブ方面へ向かう。この辺りは海岸沿いに美しいビーチが続く、カサブランカ屈指のリゾート地。夕暮れのひと時、浜辺は地元のカップルやサッカーに興じる若者達で溢れかえっている。波打ち際に佇む。大西洋に沈むいぶし銀の太陽が眩しい。ここで満を持して「哀愁のカサブランカ」をモノマネありで口ずさんでみる。しかし先ほどの事件のこともあり、どうも気持ちが乗ってこない。1番の途中、サビの手前「まるぅーで若すぅぎたぁー、季節ぬぉー香りさぁー」のところで断念する。
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19:00 海の見えるカフェで休憩
ミントティーに完全にはまる。疲れが取れる上、ヒーリング効果も大きい。何度もおかわりしてしまう。陽が沈むころ風が強くなってきた。今夜はこの近辺でレストランを探すことにする。

20:30 タヒチビーチ近くのレストランで夕食
伝統衣装に身を包んだ門番が仁王立ちするモロッコ料理店へ。なぜかここもフランス語のメニューのみ。まずはお祓いがてらにモロッコビールで身を清める。その名も「カサブランカ」。そしてメニューが読めないので適当においしいところをお願いする。クスクス、魚のグリル、魚のパイ包みとトラディショナル? なモロッコ料理が運ばれてくる。どれも驚くほどうまいわけではなく、ニントモカントモという感じ。パイ包みは風呂嫌いなオッサンのフレーバーで鼻が曲がりそうだが、慣れてくるとこれが一番うまい。後は、ひたすらビールをあおる。そして暫くするとショータイムが始まる。フロアに伝統的な音楽が流れると奥から女性が現れる。リズムに合わせ腰を小刻みに振動させる。よくわからないがベリーダンスのような踊りが披露される。しかし、ダンサーの女性は全員かなり太め。太めが好みの人にはいいのかもしれない。
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22:30 カサ・ヴォワジャー駅へ向かう
レストランを出てプチタクシーを拾う。そして夜行列車に乗るためカサ・ヴォアジャー駅へ向かう。今回、カサブランカには宿泊しない。計画を立てる際に日程を1日勘違いしてしまったのだ。後で気がついたが時すでに遅し。フェズやマラケシュも訪れたかったが叶わない。ジブラルタル海峡を挟んだスペインとの国境の町「タンジェ」へ夜行列車で移動する。


22:45 カサ・ヴォワジャー駅到着
列車出発まで2時間ほどある。満腹のところに一気に疲れが押し寄せ、駅のベンチで少し眠ってしまう。出発15分前に奇跡的に目が覚める。
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