男の週末トリップ



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DAY 3

07:30 マカオの朝、街を散策。
ホテルの朝食をパスし、朝のマカオの街へ出る。
グランドリスボアから北西へ向かう。朝から広場や公園で太極拳に励む人々。「マカオは中国である」ということを強く認識させられる。
新馬路(サンマーロー)の南側、福隆新街(フッロンサンガイ)周辺を歩く。このあたりは昔「色街」として栄えた場所。日本で言う吉原のようなところだ。今となってはその面影はなく、白壁に赤窓の家々は、皆、みやげ物や食堂に姿を変えている。しかし、一本裏道に入ると昔のままの民家が残り、朝食に鍋を振るう音や子どもの笑い声が通りの外まで聞こえる。
福隆新街から新馬路を北に進む。日本の「活気があった頃の商店街」の雰囲気を醸し出す十月初五街を歩く。漢方薬、中国茶、干物、乾麺、線香、釣具、焼豚、食堂、デザート、バイク修理、日用雑貨など、様々な店が軒を連ねる。日曜日の朝だが人通りも多い。

09:00 マカオの「モーニング」を堪能。
商店街中ほどに、「南屏雅叙」という昔ながらの食堂に似た店を八軒。遠目に店内を覗くと、地元の人々でとてもにぎわっている様子。丁度小腹も空いてきた。ここで朝食をとることにする。
予備知識もないまま飛び込んだ店。メニューを見てもよくわからないので、辺りを見回す。皆一様に新聞を読んだり、会話を楽しみながらコーヒーや紅茶とサンドイッチ、揚げパン、焼き菓子などを口に運んでいる。
場の雰囲気と周囲のオーダーから分析すると、ここは喫茶店的な位置づけで、客は皆「モーニング」を食べにこの店に来ている、と判断できる。
再度メニューに目を通し、カフェオレ(7.5MOP)とこの店の名を冠したナンピンサンドイッチ(15MOP)とエッグタルト(3MOP)、そして隣の人がうまそうに食べているマラサダのような砂糖をまぶした揚げパン、サーヨン(3MOP)をオーダーする。
ボリュームたっぷりのスクランブルエッグにチャーシューとハムがトッピングされたサンドイッチは、卵の塩加減も程よく、素直においしい。ハムとチャーシューをまったく別種の具材として同時に使うという発想もおもしろい。サーヨンは、ふっくらしたシュー生地のような揚げパンで、中はフレンチトーストのようにしっとりしており、外と内の食感は絶妙なコンビネーション。一瞬、味がさっぱりしすぎているのでは、と感じるが、すぐに杞憂に終わる。外側にまぶした砂糖と一緒にしっとりした中身を頬張ると、舌の上で最高のハーモニーが完成する仕組みになっている。
ちなみに店に伝票はなく、店を出る際に2階担当のおばさんがカップや皿をチェックする。回転寿司で皿を数える要領だ。そして確認が終わると、怒り狂ったような大声でお勘定の金額を叫び、階下のレジに伝える。混雑している中でよくミスが起こらないものだと感心していると、ところどころカウントミスや伝達ミスが発生していたようで、おばさんが慌てて階下へ降りて行く、そんなほのぼのした光景を数回目撃した。

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10:00 中国とポルトガル。
朝食後、十月初五街からセントポール天主堂跡の北側を回りホテルへ戻る。途中、観光客があまり訪れないようなエリアを歩く。道路や街並み、建築物のディテールにポルトガル統治時代の名残を垣間見る。
植民地だからといって決してポルトガル方式を押しつけるのではなく、ポルトガルと中国、それぞれの文化や風習を尊重し、両者のすばらしい部分を融合してきた形跡が街のあらゆる風景から見受けられる。ポルトガル人はマカオを本当に愛していたし、マカオの中国人もポルトガル人を受け入れていたはずだ。

10:30 ホテルチェックアウト。陸路で越境。
ホテルから車で15分。広州へ向かうためイミグレーションのある關閘 (クワンツァ)へ向かう。ここは中国本土からのメインゲートであり、ほとんどマカオ住民と中国人のためのボーダーである。

11:30中国側ボーダー、拱北(ゴンベイ)口岸にて。
広州行きのバスチケットを購入するため、地下のショッピングセンターの一角でマカオパタカを人民元に両替する。さらにワンフロア下にあるバス乗り場へ急ぐ。ボーダーで予想外に時間をとられた。10分後の11時45分発広州行きのチケットを購入することができた。70元。広州までは一般道と高速で2時間程度の道程。バスは15分毎とかなり頻繁に出ている。

11:45 広州行きバス出発。
珠海の海岸沿いを抜け、高速に入る。肥沃な土地に恵まれた、珠江デルタ地帯に広がる田園風景、丘陵地帯にはマンゴーやバナナなどの果樹園も見られる。そして広州に近づくにつれ徐々に農業地帯から工業地帯へと車窓は変化していく。
ちなみに、香港、マカオでは車は右ハンドル・左側通行。中国では左ハンドル・右側通行。しかし、珠海はマカオと陸路で接しているため、マカオからの右ハンドル車も普通に道路を走っている。
今回乗車したバスは右ハンドル車で乗降口は左側。中国サイドで右側への乗降をスムーズに行うため、車内中央部右側に座席をくり抜いて乗降口を備えていた。道中、何度か高速道路の料金所を通過したが、その都度ドライバーが運転席を離れ反対側に移動し乗降口を開けて通行料を支払う。かなり面倒な様子だ。しかし何より大変なのは、逆ハンドルの大型バスで交通量の多い広州市内を走ることだ。大丈夫か?

14:00 広州市内(中国酒店前)到着
「足のあるものはテーブル以外」、「羽のあるものは飛行機以外」は何でも食材に使う広東料理の聖地で、食の原点に触れることが旅のメインテーマのひとつ。
今回はいまだに犬や猫を食べる習慣をもつといわれる広州で、食用の犬や猫、そのほかの野生動物を扱う市場に潜入を試み、彼らの食への貪欲さを確認する予定だ。

14:20 動物市場へ向かう。
中国酒店でタクシーに乗る。食用動物の市場へ行きたいと、ドライバーに告げるがうまく伝わらない。実は、事前に調査し、詳細な住所を把握していたが、まずいことに羽田のロッカーにスーツと一緒に放り込んできてしまったのだ。
要領を得ないでいると、中国酒店の日本語がわかる若いハンサムなスタッフが救世主のごとく現れた。
改めてこちらの用件をそのハンサムボーイに伝える。すると先ほどの柔和な表情が急に曇り、笑顔が消えた。そして「本当に行くのか?」と確認される。
「そうだ」と答えると、感情のない口調で2点アドバイスをしてくれた。1つはそこを訪れたことがトラウマになっても仕方なしと覚悟すること。もうひとつは「写真撮影」には細心の注意を払うこと。近代化する中国、経済の要所広州、徐々にその市場の存在はタブーになりつつあるようだ。
ハンサムボーイに礼を言い、タクシーに乗り込む。車の中で彼のアドバイスが頭の中を巡る。しかし、迷いはない。

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15:00 動物市場1。
20分ほど走ったところで運転手が「ここだ」と合図する。市場のような雰囲気の建物に動物を扱う独特の気配を感じる。
カメラに細心の注意を払い潜入する。路地がいくつもあるため、適当に細い角を曲がる。でっぷり太った大量の金魚とおびただしい数の亀が売られている。金魚も食べるのか? そしてさらに奥へ進むと、ついに犬の吠える声が聞こえてきた。
ケージに入れられた愛らしい犬たち。こんなかわいい犬を煮たり焼いたりして食べるのだろうか? チワワのようなかわいい犬を、店先で小さな子どもがなでている。食う前になでるとは、一体どういう精神状態なのか? まさに理解に苦しんでいる時、何となくムードが違うことに気づく。
人間の食に対する欲求が高まった時に発揮される、本能的、動物的エネルギーのようなものがここでは一切感じられないのだ。もう一度冷静になってあたりを見回す。
生き物はたくさんいるが、隣の店の亀が入れられた箱に、「財運」とか「成功」とか縁起のいいキーワードが記された「札」が掲げられている。懸念していたことが現実となる。どうみてもこのムードは食用ではなく、観賞用だ。ここはペットの卸売市場だ。

16:00 食用動物市場1。
砂を噛むような思いをしつつも、体勢を立て直さなければならない。時間がない。
すぐさまタクシーを捕まえ、筆談でこちらの行きたい場所を再度伝える。
苦戦を覚悟していたが、なんとドライバーから一発OKのサインが出る。即出発だ。
途中、タイヤの空気が抜けたため、修理工場経由でメーターは高くついたが、それもご愛嬌。
なにせ「食用動物市場」と書いて一発OKが出たのだ。
車を20分くらい走らせる。幹線沿いの流通センターのようなところで降ろされる。

16:30 食用動物市場2。
期待と不安が入り交ざる中、市場の入り口らしきところへ向かって歩を進める。
再び様子がおかしい。全く人気がないのだ。しかもその施設は門が堅く閉ざされている。休みだ。
あまりにもスムーズなリカバリーショットに気を緩めたのが災いする。そして再び絶望の淵に立たされる。休みなら仕方ない面もあるが、これではここが本当に「食用動物市場」なのかすら判断できない。
これも神の思し召しとして受け入れる。そしてこれ以上、「食用動物市場」を探すことは諦めることにする。

17:30 海珠広場で広東料理。
孫文を記念して立てられた中山紀念堂までタクシーで戻り、そこから海珠広場方面へ向かう。
いざ、海珠広場近くの広東料理の店へ。さすが広州、隣のテーブルではファミリーが小さな鳩を姿揚げにしたようなものをバリバリ食べている。しかし、我々はその類の料理はパスする。写真で見てごく普通にうまそうなものをオーダーする。
チャーシューなど、注文した料理は、びっくりするほどハズレなし。青島(チンタオ)ビールがハイピッチで進む。今回の週末トリップ、食事で外したことは今のところない。幸せである。

19:30 広州東駅。
地下鉄2号線、海珠広場駅から公園前で1号線に乗換え、広州東駅へ向かう。
そこから香港(九龍)行きの直通列車に乗る。
香港までのチケットは、あらかじめMTRのホームページで特等($HK230)をクレジットカードで購入してある。予定通り、プリントアウトしたアイテナリーをチケット窓口に提出する。
しかし、一通り目を通した窓口の様子がおかしい。どうも、この控えでは発券できないないらしい。さらに聞くと、MTRのホームページで購入したチケットは、たとえ広州発でも香港でしかチケットに引き換えられないとのこと。従って今から香港に行ってチケットを入手して来るように言われる。
「そんなむちゃくちゃな話がありまっかいな」と一発ぼやいた後、いやな汗が背中を流れる。
「満席だったら帰れないな」
すぐさま空席があるか確認する。幸い空席はあるようだ。
非常に悔しいが改めて同じチケットを買い直すことにする。

少々落ち込みながら、チケット代を支払うべくポケットまさぐる。再びいやな汗が背中を流れる。 「人民元がない」
元はすべて広東料理となりこの腹の中に未消化のまま収まっている。
ポケットから出てきたのはくしゃくしゃのマカオパタカと香港ドルだけだ。

「香港ドルは使えるのか」
ダメもとで窓口に訊いてみる。すると、こちらの焦りに反してあっさり答えが出る。「問題なく使える」
しかし、チケットは香港で買うとは230ドル。人民元だといくらかわからない。とりあえず250香港ドル出してみる。交換レート次第では足りないだろうと思案していると、なんと20ドル、香港ドルでお釣りが来た。
広州東駅で、香港と同じプライスで、香港ドルでチケットが買え、香港ドルでお釣りが来る。
人民元建てで買うのが高いか安いかは別として、一般的なことかも知れないが、すごい発見をした気分になる。

出国手続きは広州東駅で、直通列車の出発時間に合わせて行われる。 そのため、大混雑のシンセンや珠海のボーダーのように時間がかからない。比較的スムーズに手続きは進む。

ちなみに広州から香港への直通列車は夜9時台まで。ほぼ1時間に1本出ており、中国鉄道所属の電車タイプのものと、香港MTR所属の客車タイプのもと2種類走っている。特徴は中国サイドの車両が座席配置2-2タイプの1等席に対し、香港サイドの車両はオール2階建てで座席配置1-2の特等席の設定がある。また、中国サイドの列車には2時間弱の運転時間にもかかわらず食堂車が連結されている。これも爆食中国のプライドか。

20:15 定刻出発。
夜の広州東駅、直通列車が動き出す。

22:05紅磡(ホンハム)駅定時到着。タクシーを拾い空港へ。
深くシートにもたれ、車窓に流れるネオンが眠気を誘うが、気がつけばすでに空港に到着。いよいよ週末トリップも終盤だ。

23:20 JL8730便チェックイン。
世界屈指の国際ハブ空港も、さすがにこの時間はフライトも少ない。ラウンジでシャワーを浴び、軽く食事を取る。

25:20 香港国際空港定時出発。
タキシング中に眠りに落ちる。いつ離陸したかも記憶にない。

DAY 4

06:30 羽田空港国際線ターミナル到着。
ロッカーで留守番をしていたスーツと革靴を引きずり出す。入れ替わりに、この週末世話になったバッグを自宅に送る手配をする。ネクタイを締め仕事へ向かう。また新しい1週間が始まる。


●次回は「マレー鉄道での濃密旅行」をお届けします。



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