(2009/07/24)
まずはじめに、皆さんに伝えたいことがあります。
私自身、独立に「反対」だということです。
私は二代目として家業を嫁いできた身ですので、独立開業の経験はありません。しかし、家業を継いでいく中で、飲食店を経営していくことの厳しさをたくさん知りました。同業者のみなさんや、矢場とんから巣立っていった社員たちの苦労を知るにつれ、独立することの大変さを痛感しています。それが、むやみに「独立」をお勧めする気になれないという、私の正直な意見なのです。
しかし、その大変さを十分理解したうえで、それでも「独立」という道を選ぶ方たちのために、私なりの「失敗しない飲食店開業心得」をお話したいと思います。これまでの経験や培ってきたノウハウを、皆さんにお伝えし、一人でも多くの方に"明るい独立開業"を実践していただきたいと思います。
私自身、独立に「反対」だということです。
私は二代目として家業を嫁いできた身ですので、独立開業の経験はありません。しかし、家業を継いでいく中で、飲食店を経営していくことの厳しさをたくさん知りました。同業者のみなさんや、矢場とんから巣立っていった社員たちの苦労を知るにつれ、独立することの大変さを痛感しています。それが、むやみに「独立」をお勧めする気になれないという、私の正直な意見なのです。
しかし、その大変さを十分理解したうえで、それでも「独立」という道を選ぶ方たちのために、私なりの「失敗しない飲食店開業心得」をお話したいと思います。これまでの経験や培ってきたノウハウを、皆さんにお伝えし、一人でも多くの方に"明るい独立開業"を実践していただきたいと思います。

「独立したい」「自分のお店を持ちたい」と考える方は、やはり、「男なら一国一城の主になってみたい」といった“男のロマン”を描いている場合が多いようです。また、現在の勤務先で不満を抱えたり、不自由を感じていて、それならば独立してしまおうと考える方もいらっしゃるでしょう。
まずは、今いる環境の中で出来ることを考えてください。
たとえば、職務上の不満があるならば、同僚や上司に改善策を提案し、職場を自分の力で変えてみてはいかがですか? やりたいことに挑戦できるチャンスはないのか、模索してはいかがですか? 本当に自分が出来る限りのことをしたのか、一度立ち止まって考えてみてください。
もし、現在の環境の中で不満が解消されたり、自分の夢や希望をかなえる準備が出来るなら、こんな幸せなことはありません。雇用されているということは、最低限の生活が保障されているということ。安定した環境に守られながら、自分のやりたいことに取り組めるとしたら、最大限の力が発揮できるはず。何より、それが夢をかなえる近道でしょうし、一番の幸せだと思います。
現在の職場環境で夢を実現するのがちょっと難しいという人は、自分の希望に近い職場に転職するという道もあります。
昔は、飲食店では10年ほど修行したら独立するのが一般的でした。なぜなら経営者は、雑用をこなしてくれる、よく働く20代までの若い社員だけが必要だったからです。勤務年数が長い社員ほど、給料を上げなくてはならないなど、経営的にマイナスが生じる可能性が高くなります。そこで、社員がある程度の勤務年数を重ねると、彼らに独立を促すというのが主流でした。
最近は、成果を挙げた社員には「出店」という形で店舗を任せ、責任を与える仕組みを持つ飲食店が増えました。いわゆる“飲食店の企業化”が進んでいるということです。矢場とんも大阪や福岡への出店を計画しています。貢献してくれた社員を地元に帰し、彼らの地元へ矢場とんをつないでいってほしいという気持ちがベースにあるからです。
飲食店とはいえ、会社として、社員の生活が潤うような体制を整える。これは、すべての飲食店が取り組まなければならない課題であると考えています。最近では、これまで以上に給与や待遇といった点が改善され、結婚、住宅購入など、社員たちが夢見る“明るい未来”を実現可能にする飲食店も増えてきているといいます。
体制の整った飲食店に勤めているならば、安定した生活を維持したまま、着実に夢へ近づいていけるはずです。リスクを抱えたまま独立するより、ずっと現実的です。また、異業種からの独立を考えるのであれば、こうした会社に入社し実績を上げ、いずれは経営の一翼を担っていくという道も検討してみるべきです。
とはいえ、やっぱり「雇われたくない人」「どうしても独立したい人」は、まず、雇われる不自由さを経験してから、独立することをお勧めします。
不満や不自由は、知恵の種です。
「自分ならこうするのに」「ここがだめなんだよ」「こういう言い方はだめだな」など、現状を俯瞰的に分析し、それを改善するための知恵を引き出しにいっぱい溜めて独立してください。不満だけを挙げて、現状を変える努力をしないのは、ただのわがままです。わがままで成功するほど、経営は甘くありません。
ダメだった部分を改善していけば、きっと何でも成功するはずです。
雇われる中で見えること、学べることはたくさんあります。それこそ、近い将来に自分が独立したときの糧になると思うのです。生活や雇用を保障された中で勉強できることは、何より幸せだと思います。

これまで、皆さんの独立開業への夢を壊すようなことをお話ししてきました。なぜなら、皆さんに安易な独立をしてほしくないからです。飲食店で成功する人は、ほんの一握り。消費者として、飲食店の栄枯盛衰は目にされたことがあるはずです。
では、どうしたら、「独立で成功する」ことができるのか。私自身がお店を運営していく上で一番大切だと思うことをお話しします。
それは、「現場が好きであること」です。
もちろん、飲食の現場を経験しなくても、資金さえあれば飲食店は開業できます。では成功する店とは、どんな店なのか?
それは、お客様の顔が見えている、お客様が何を求めているのか分かっている店だと思うのです。それを理解するためには現場を経験するしかないと思うのです。
大不況の現在、飲食店は軒並み、苦戦を強いられています。そんな中、一人勝ちと言われているお店があるそうです。
それは「餃子の王将」さんです。
最近テレビで拝見しましたが、そんな王将さんも一時は危機を迎えていらっしゃったそうです。大変な時期に社長に就任し、現在の成功を導いたのが、現場出身の現社長・大東隆行(おおひがし・たかゆき)さんだったそうです。
では、大東さんが、どうやって苦境を乗り越えたか?
まず大東さんは、王将の要である餃子の焼き方の改善に着手します。自らが餃子を焼き、ベストな焼き加減を見極め、全店長に教え込みます。また、当時、各店共通のメニューでファミレス路線を歩んでいましたが、各店の店長一人ひとりの裁量で、オリジナルメニューを提供できる権限を与え、各店の個性を尊重しました。
これは、現場を知っていたからこそできた大英断だと思います。この方針が功を奏し、現在の成功を呼び込んだのです。
私が分析するのも大変恐縮なのですが、この成功こそ、大東さんが長年現場で「お客様の求めているものは何か」「その街が求めている店の姿はどんなものか」を見極めてきた結果ではないかと思います。飲食店経営者として、お客様だけではなく、「現場スタッフや店長のモチベーションを高めること」を、真摯に実践されてきたからこそ、成し得たことだと思うのです。
私自身、いまだにお店に出ると、新たな発見や喜びがあります。お客様がいるから商売を続けていかれるということを、改めて感謝する瞬間でもあります。また、店舗に出ることで、スタッフを励ましたり、改善点を指摘したりする機会が増えます。もちろん、自分が経験していないことはなかなか指摘できませんし、もし指摘したとしても、現場は耳を貸してくれません。私が現場に出ることで、いい緊張感を与えることができるのは、実践で培った経験があるからだと思います。
現場を経験することには、もうひとつ大切な意味があります。それは、“最後は一人になってもいい”という覚悟をすることです。シェフやフロアスタッフを雇ったとしても、彼らはあくまで雇われる側。いつ辞めてしまうかわかりません。経営が順調にいかなくなれば、そのスタッフも解雇する必要が出てきます。
もしそんな不測の事態が襲ったとしても、現場を経験していれば、私一人になってもお店を続けていける。現場の経験は、自分に自信と覚悟を与えてくれるのです。
矢場とんでも、三代目である息子がよく言います。
「自分が経営する時代になり、もし何かあって店をたたむことになっても、最後には自分がカツを揚げ、嫁がカツをお出しすれば、矢場とんの“のれん”はなくならない」と。
また、実際の現場を経験してみたら「これは自分がやりたいと思っていたこととは違うかもしれない」と気づくこともあります。朝から晩まで働く覚悟が出来るか。家族がいれば、家族に迷惑をかけず養っていくことが出来るのか。現場を経験して、こうした現実を鑑みた上でまだ夢が持てるか。よく考えてみたらまた違う道が見えてくるかもしれません。
自分は経営に徹するからお店には出ない、という方もいると思います。しかし、私は一度は現場を経験しておくべきだと思います。現場を知っていること。それが最後には何より強い武器になるからです。
●次回は、「何を強みとして開業するか」ということについてお話ししたいと思います。
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鈴木純子 Junko Suzuki


